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ファイターズからスワローズへ。両球団の指導法の違いとは?

Text:遠藤玲奈

今浪隆博さん&鵜久森淳志さんトークショーレポート(20.2.20)

今浪隆博さんと鵜久森淳志さんの共通点といえば、北海道日本ハムファイターズから東京ヤクルトスワローズへ移籍したことです。先にスワローズ所属となった今浪隆博さんは「こいつがついてきたんだ」と嬉しそうに語ります。
今浪隆博さんが2歳年上、プロ野球選手としてのスタートは鵜久森淳志さんが2年早く、スワローズへの移籍は今浪隆博さんが2年早いという間柄のお二人は、本当に仲がよいのが伝わります。

両チームの違いについて、体験した元選手ならではの視点で聞かせてくださいました。ファイターズの若手の育成は、膨大なデータによる評価に基づいて行われます。理に適っていることが選手たちにもよくわかるため、納得して課題に取り組むことができます。
スワローズの方が個々の指導者に任されている部分が大きいようです。今浪隆博さんは移籍したばかりの頃、松井優典コーチに「ファイターズでやっていた通りにやっていい、他の選手たちに見せてやってくれ」と言われました。
鵜久森淳志さんの印象に残っているのは、杉村繁コーチのご指導です。細かいことは言わず「これだけやっておけばいい」ときっぱり述べることで、モチベーションを上げてくださったそうです。


お二人の現役時代の打撃についても詳しく教えていただきました。今浪隆博さんは、シーズンごとにフォームを変えていたそうです。
とても勇気のいることなのに、と鵜久森淳志さんは驚いていたそうですが、今浪隆博さんはシーズンが終わった後しばらくはバットを持たず、リセットする期間にするそうです。その間に、次のシーズンはこうしよう、とイメージを膨らませておき、自主トレ開始とともに形にしていきます。
鵜久森淳志さんは、打力に優れた他の選手の打ち方を参考にしようとしていた時期もありました。ところがある時、結局は他人の体だ、と気づきました。自分が全く同じ形にしても同じ結果が出るとは限らないということです。独自の探求を重ね、投手によってスイングを変えるようになりました。

一流の選手を見ていて、鵜久森淳志さんはさらに気づいたことがありました。走攻守三拍子揃った、という表現が、優れた野球選手の条件としてよく用いられます。
鵜久森淳志さんが例として挙げたのが、糸井嘉男選手です。元々の才能も飛び抜けている上にハードな練習でそれを磨かれたら敵うはずがない、と感じていたそうです。
ただ、そういう選手は本当にごく一部のトップだけで、レギュラーとして活躍するためには、ひとまず二拍子だ、と悟りました。
走と攻、攻と守、といったように2つをセールスポイントにできれば、使える選手、とみなされるのです。
ただ、鵜久森淳志さんが確固たる自信をもてたのは打撃のみでした。ひとつなら相当磨き上げてスペシャリストにならなければならないとの覚悟で、打撃練習に励んだのです。精いっぱい取り組んで引退したので、もっとやれたはずでは、という後悔はないと、すがすがしくおっしゃっていました。


僕は一拍子もなかったから、と今浪隆博さんは笑っていましたが、もしそれが本当なら今の役割に就くことはなかったはずです。
現役の時以上、と鵜久森淳志さんが笑っていましたが、今浪隆博さんの掌にはたくさんのマメができています。現在、今浪隆博さんは、企業の軟式野球チームの監督をなさっています。ゴリラクリニックベースボールという名前のチームで、選手は10人、スタッフの数も限られています。ひとりでノックを打ち続けなければならない日もあり、その結果のマメなのです。

スポーツメンタルコーチと野球の指導を両立させる今浪隆博さんと、営業職が板についてきた鵜久森淳志さん。それぞれの道を歩んでも、野球で結ばれた絆が切れることはありません。


『ラブすぽ』ライター:遠藤玲奈
池田高校のやまびこ打線全盛期に徳島に生まれる。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。選手としての経験はないが、独自の方法で野球の奥深さを追究する。特に気になるポジションは捕手。フルマラソンの自己ベストは3時間31分。

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