人はどのように説得されるのか
説得とは、自分とは異なっている、相手の考えや態度を変えようと働きかけることです。これはおもに4つの過程で成り立ちます。まずは、送り手側の発信が相手の注意を引くこと。次にこちらのメッセージが相手に理解されることです。ここで、情報が相手にとって価値を持つものと思われれば、次の受容へと繋がっていきます。なお、この段階で送り手側のメッセージは受け手側が受け入れたことになります。最後に、その説得内容が相手に記憶されれば完了となります。
上手な説得には、送り手側の信憑性も重要になってきます。相手が大学教授など、専門家である場合や、身近で信頼を得ている人であれば、より信憑性が増すため受け入れやすくなるでしょう。
さらに、受け手側にあまり専門知識が無い場合は良い面だけを提示する一面的メッセージが有効で、反対に受け手側が既にある程度の知識を持っている場合は、悪い面も合わせて提示する両面的メッセージが有効だとされています。これは、あえて反対の意見も入っていることで、客観的で公正な情報だと感じられるためです。
もちろん、送り手側の姿勢も重要です。説得の意図を明瞭にして、受け手にどんなメリットがあるかを説明しなければなりません。説得において注意しなければならないことのひとつが、心理的リアクタンスです。これは、説得された内容に関し、受け手側が自分の自由への脅威が大きいと感じると、あえて言われたこととは反対の行動をとって、自由を回復しようとする心理状況のことです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』 監修:亀田達也
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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?
日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。
この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。
明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう
この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした
ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。
会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。
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『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
監修:亀田達也
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公開日:2022.11.13