気をつけて少しずつ体を慣らす
たびたび腰痛を経験している人は、重いものを持たない、腰をあまり動かさないなど、自らの行動を制限しがちです。まして痛みがある状態なら、これ以上痛みがひどくならないよう、安静にしている人が多いのではないでしょうか。
安静にするのが決して悪いわけではありませんが、腰を過度に守るよりは、むしろ積極的に体を動かしたほうが快方に向かいやすく、痛む頻度も少なくなります。体を動かさないと筋肉がこわばり、筋力や柔軟性の低下を招きます。洗顔やくしゃみをしただけでぎっくり腰になる人がいるのも、瞬間的にかかる大きな負荷に衰弱した腰が耐えられないためです
このようなもろくて不安定な状態では、症状の回復もままなりません。筋肉の健やかさを維持する上でも、適度に体を動かすことをおすすめします。ちなみにぎっくり腰に関しては、安静にしているより、できるだけ通常の生活を送るほうが回復は早いという研究データもあります。
ただし、無理は禁物で、最初の2~3日は安静にしていても構いません。「腰まわりがだるい」「腰に突っ張る感じがある」「腰をかがめると、きしむような感じがする」といった症状のある人も安静にして、しばらく様子を見てください。また、痛みが治まったからと急に運動をしたり、動き過ぎたりすると再発の原因に。現状でできることを冷静に判断して、徐々に体を慣らしながら動かすようにしてください。
ぎっくり腰は動いたほうが治りやすい!?
「痛みがぶり返すのでは」という不安から、体を動かすことに消極的になりがちですが、動いたほうが筋肉の衰えを防ぎ、 治りが早くなります。
ぎっくり腰を早く治すなら安静よりも動くほうがいい
フィンランド労働衛生研究所の研究結果は、体を動かすほうが、ぎっくり腰の治りが早くなることを示しています。 左のグラフによれば、ぎっくり腰の治療中に通常の生活を送った人は、 安静にしていた人に比べて、 約半分の日数で職場復帰を果たしています。
出典:『専門医がしっかり教える 図解 腰痛の話』著/吉原潔
【書誌情報】
『専門医がしっかり教える 図解 腰痛の話』
著:吉原潔
今や4人に1人が悩んでいるとも言われる国民病である『腰痛』。ぶつけた、痛めた、ぎっくり腰といった原因がハッキリしている腰痛だけでなく、『脊柱管狭窄症』『椎間板ヘルニア』『ぎっくり腰』などによる痛みや、病院で検査しても特に異常が無いと言われるものまで、痛みの原因は多種多様にあります。しかし、そんな痛みに対して痛み止めや筋弛緩剤などの薬で対処療法だけをしていても根本の治癒にはなかなか繋がらないため、しっかりと『腰痛の原因』と向き合うことが大切です。本書ではそんな腰痛を治して、長い人生を痛み無く健康に過ごすために、『脊柱脊髄外科専門医』と『フィットネストレーナー』という2つの肩書を持つ腰痛の名医による、腰痛が治らない意外な原因と、骨と筋肉にアプローチする自宅でできる腰痛のセルフケア法を紹介します。
公開日:2023.07.15