動機から見た連続殺人② 偏った信念に基づき殺害を繰り返す「使命型」【図解 犯罪心理学】
特定のカテゴリーの人を狙う使命型
第2のタイプは、使命型です。これは、偏った信念によって、殺人を行っていくタイプで、「世の中を悪くしているのは特定の人種だ」「売春婦がアメリカを堕落させている」「妊娠中絶をする医師がいるから性道徳が乱れる」といった考えで、そのカテゴリーに該当する人物を殺害していきます。
彼らの特徴は、その人物を殺害することによって世の中がよくなると本気で信じている点です。自分の正義感によって犯行は行われているので罪悪感はありません。
殺害には、銃など、強力で人を素早く確実に殺害できる凶器を準備し、計画も冷静に行われます。殺害後は逃走して、犯行を継続しますが、それは、よりよい社会を作るためにその活動を続けることが必要だと考えているからです。
このタイプの犯罪者の例としては、麻薬中毒者を狙って殺人を行った警察官マニュエル・パラドや、白人至上主義に傾倒して黒人とユダヤ人を殺害し続けたジョセフ・ポール・フランクリン。そして「産業化社会が人々から人間らしさを奪っているため、それを崩壊させなければならない」という使命から航空会社などに爆弾を送り付けた、セオドア・カジンスキーなどがいます。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太
監修者プロフィール
法政大学文学部心理学科教授。1965年、神奈川県横浜市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。臨床心理士。専門は犯罪捜査への心理学の応用。著書に『犯罪捜査の心理学』(化学同人)、『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)ほか多数。
昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。
公開日:2024.07.16