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パリオリンピックで使用される新型バイク「V-IZU TCM2」! その脅威の特性と秘密に迫る!【東レ・カーボンマジック】

オリンピックで威力を発揮する新型バイク「V-IZU TCM2」

東レ・カーボンマジック社が開発し、パリオリンピックで日本代表選手が使用する新型バイク。今までのバイクと明らかに違う特徴として、見た目のフォルムの違いが挙げられるだろう。幅の広いフロントフォークとシートステー幅の広さ。前面から見ると、フロントフォークの後ろにシートステーが隠れる形になっているのが大きな点である。
なぜ、こんな形状なのか? それは東レ・マジックカーボンが長年かけて研究、開発してきた空力の問題が絡んでくる。フロントフォークの幅を大きく広げた結果、フォークの後ろに発生する空気の渦を利用して、人の体が起こす空気抵抗を極限まで軽減するという工夫である。

東レ・カーボンマジックでは、本社の滋賀工場に隣接する風洞実験施設を利用し、自転車のみならず、人が乗った時に生じる空気抵抗データ実験を繰り返した。この結果、「V-IZU TCM2」最大の特徴である「ドライブトレインを左側に設置する」という発想が生まれたのである。ドライブトレインとは駆動関係に属するパーツのことで、一般的には
①リアディレイラー
②フロントディレイラー
③カセットスプロケット
④フロントチェーンホイール(クランクセット)
⑤チェーン
などのパーツを指す。

一般的な自転車は、これらのパーツが右側に設置されている。その理由は世界的に見ても右側に付ける前提でパーツや工具、整備の仕方が確立されているからだ。それを左側につけるとなると、パーツはもちろん整備する整備道具から作り直さないといけない。実際に整備する時も普段と違う工程を経なければならず、格段に手間と時間がかかる。そんな苦労があるにもかかわらず、左側に付けるメリットとはなんなのだろうか。

自転車トラック競技は、屋内施設で行われる。しかも決まって、反時計回りのレースであり、バイクの右側が必ず外側に位置するのだ。外側にドライブトレインがある場合、空気抵抗が大きくなる傾向がある。度重なる空洞試験の結果、ドライブトレインが左側にある方が空気抵抗を約1%軽減できることが判明した。このわずか1%のために、東レ・カーボンマジックは「左側」を採用したのである。

2024年5月、自転車競技の聖地である伊豆ベロドロームで「V-IZU TCM2」がお披露目された。その会見場で、JCF 選手強化スーパーバイザーである中野浩一氏は、次のように語った。「実際にバイクを使用した選手の感想は『スピードに乗ったら、落ちづらい』というもの。一度慣性に乗ると、本人が感じる以上のスピードが出ている。ゆっくり走ると重たく感じるけれども、スピードが上がるだけ速さを感じられる特徴がある。レベルの高い大会で使用するほど、その効果を感じられます」

パリオリンピック日本代表選手たちからも「50〜60kmほどにスピードが乗ると、その慣性で加速し続ける感覚がある」「バンクの上から降りるときに、下りでの加速がすごい」といったコメントが出る。

自転車競技は漕ぎ手である選手の技量が大切なのは言うまでもないことだが、人とバイクが一体となってはじめてパフォーマンスが発揮される競技である。選手の実力に加えて+アルファを担うバイク。その開発には時間と開発費の他に、わずかな妥協を許さない開発チームの情熱が必要なのである。

取材協力:東レ・カーボンマジック株式会社

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