過度なストレスが不安障害の原因に
不安障害が発症するのには、さまざまな条件が存在します。その代表格ともいえる「遺伝・気質・環境」と「ストレス」について見ていきましょう。
遺伝・気質・環境の3要因
不安障害の種類によって、発症しやすい年齢に違いがあることがわかっています。不安の対象となる動物や場所などが特定されている「限局性障害」は小児期から18歳ごろまで、「社会不安障害」は青年期から成人初期、「パニック障害」は20代から30代といった具合です。
大まかにいえば、不安障害は若い頃に発症しやすく、それは発症の原因にかかわる「遺伝・気質・環境」の3要因が、生まれてから成人するぐらいの間に、おおよそ形成されるからだと考えられています。ただし、長い間、医師の診察を受けることがなく、高齢になってから病気とわかるケースも多くあります。
遺伝的要因としては、不安障害にかかわる遺伝子が複数発見されています。ただしその効果は小さいものです。両親のいずれかが不安障害の場合とそうでない場合を比較すると、子どもが不安障害になる確率は前者の方が高いのですが、これは遺伝というよりも、親の言動などが子どもの気質的要因に与える影響なのかもしれません。
気質とは持って生まれた性格の一部です。幼少期からあらわれ、人見知り、臆病といった「行動抑制」の気質の強い人が、不安障害になりやすいといわれています。パニック障害の親を持つ子供の8割には、行動抑制が見られるという調査結果もあります。
環境的要因で重要なのは幼少期の育成環境でしょう。特に親との早期離別や、両親の不和、虐待を受けた経験などは気質に関係なく、子どもの心に傷を残します。
ストレスから発症へつながるルート
不安障害発症の引き金となるのは、多くの場合ストレスだといえます。家庭、学校、職場などさまざまな状況で、ほとんどの人が経験するストレスが、どうして一部の人にとって、不安障害につながってしまうのでしょうか。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の原因となる「極めて衝撃的なできごと」との遭遇を除けば、ストレスは日常生活を通して、人の心や体に徐々に蓄積していきます。ストレスの処理能力、許容量には個人差があり、限界を超えてしまうと、心や体に何らかの「反応」があらわれます。ここまでは誰にでも起こることです。
しかし、あらわれた心身の「反応」にどう対応するかによって、結果が異なってくるのです。たとえそれがパニック発作のように激しい身体反応であっても、必ずパニック障害を発症するわけではありません。過度のストレスによって自分の心身に起きた反応を正しく評価、認知できないことが、不安障害の根本的な症状なのです。
ただし、これはあくまでも症状であり、本人が考え、選んだわけではありません。発症に大きくかかわるのは、やはり、遺伝・気質・環境の3要因といえそうです。
CHECK!
- 不安障害の主な要因には「遺伝・気質・環境」がある
- ストレスが不安障害発症の引き金となる場合が多い
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修
【書誌情報】
『心の不調がみるみるよくなる本』
ゆうきゆう:監修
現代増加の一途をたどる「不安障害」。
不安障害とは払拭できないほどの不安や恐怖の感情が過剰に付きまとい、日常生活に支障をきたすような状態になることです。
一概に不安障害といってもさまざまな症状があり、突然理由もなく激しい不安に襲われて発作などを引き起こす「パニック障害」や、謎の強迫観念にとらわれて意味のない行為を繰り返す「強迫性障害」、若者に多く人前にでると異常に緊張して体調を崩す「社交不安障害」などタイプは異なります。
本書ではそのような不安から引き起こされる心の不調について、症状例をそえて専門医がわかりやすく解説。自分の「不安障害度」を簡単にチェックできる診断テストも掲載。病気を自覚し、その症状にあわせた治療を受けられるようサポートする一冊です。
公開日:2024.12.14