ローマ帝国が滅んだのは毒のせいだった!?
古代ヨーロッパで繁栄したローマ帝国。その滅亡の原因のひとつが鉛(なまり)だったのではないかとする説があります。鉛は柔らかく加工しやすい金属で、ローマ帝国では非常に役立つ資源として広く利用されていました。
たとえば、酢酸が生成してしまいすっぱくなったワインを、鉛製の鍋で煮込んで甘みを出していました。この過程ではワイン中の酢酸と鉛が反応して、酢酸鉛という化合物が生成します。この酢酸鉛は色がなくて甘味を有しており鉛糖(えんとう)とも呼ばれる水溶性化合物です。さらに、ワインを飲む杯も鉛製だったため、鉛を摂取することは避けられませんでした。このように日々の生活を通じて鉛が体内に蓄積していった様子は、容易に想像できます。
鉛を大量に摂取すると、中毒症状として麻痺や精神障害があらわれます。このように、ローマの人々は鉛を多量に摂取していたため、なんらかの症状が出ていたとしても不思議ではありません。それがローマ帝国滅亡の一因となったのではないかと考えられているのです。
当時はこのように、鉛の毒性が知られていませんでした。しかし、現代ではその知識が広まり、日常生活で有害なほどの鉛を摂取することはありません。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話』監修:船山 信次
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話』
監修:船山 信次
日常生活のなかで、毒性のあるものを誤食したり、毒を持つ生物に触れたりして中毒症状が出たというケースは少なくありません。
スイセンやキノコの誤食など毎年のように発生しており、毒は非常に身近な存在です。
本書はまず毒とはなにかという毒の定義や作用などの基礎を化学や薬学の知識がない人にもわかりやすく解説。
例えば「地球上で最凶の毒は?」「青酸カリって舐めても大丈夫?」など、気になる毒の雑学とともに紹介します。
また、毒を持つハチ、カエル、クラゲなどの生き物やスイセン、アジサイ、トリカブト、カエンタケなどの植物やキノコ、アスベスト、ダイオキシン、火山ガスなど環境系の毒、
依存度が高いコカイン、危険ドラック、覚せい剤などの麻薬……etc.
人体に影響を及ぼすあらゆる毒を収録!
誰かに教えたくなる毒の最新知識や雑学が詰まった一冊です。
公開日:2025.03.11
