いまだ解明されない現代科学の最大の謎!
脳をめぐる問題の究極は、物質に過ぎない脳に、いかにして意識が、あるいは心が宿るかということです。
脳の神経細胞も突きつめていけば物質です。物質系の活動と反応は、最終的には方程式で記述されます。物質の活動と反応が、方程式のような形式的な理論で書けるという立場を「物理主義」といいますが、この立場からは、意識を生み出す脳も、石ころなどと本質的には変わりはありません。
ところが、現在の知見を総合すれば、脳のなかの神経細胞の活動によって人間の意識が生まれていることは疑いのないところです。
なぜか?ヒントは、神経細胞の関係性にあります。神経細胞を1個取り出して培養しても、私たちが知るような人間の意識は生じません。神経細胞の関係性を通して、意識は生まれるからです。
これは現代科学の最大の謎の1つで、私自身もライフワークとして「人間の意識とは何か」を解明する研究に取り組んでいます。でも、残念ながらいまだに答えにはたどり着けていません。
この謎が解ければ、まだ解明できていないほかの多くの謎が解明できる可能性が開けるかもしれません。生きるとはどういうことか、死ぬとはどういうことか、時間とは何か、といった哲学上の疑問に答えるカギが見つかるかもしれないのです。
大切な「心」を生み出しているのが脳であるとすれば、脳を考えるということは、すなわち「私たちの人生を考える」ということを意味しているといえます。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎
シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。
公開日:2020.09.01