屋根がない不思議な絵「吹抜け屋台」で描かれた恋愛模様、国宝「源氏物語絵巻」を図解!【眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話】

平安王朝貴族の恋愛模様を映した再現絵巻!

「吹抜け屋台」手法で室内の様子を描写 ── 源氏物語絵巻

 「源氏物語絵巻」(国宝)は、周知の通り、紫式部作『源氏物語』を絵画にした絵巻で、物語が成立したのち、およそ150年後に作成された作品。物語54帖の内、各帖より1~3場面を「絵画」に描き起こし、それに対応する物語の本文を絵画の前に書き添える「詞書」をセットにして、交互に繰り返す構成だ。もともと10巻程度の絵巻だったと推定されるが、江戸時代に内3巻が尾張徳川家、別に1巻が阿波蜂須賀家に伝来。そのほかは伝承、伝来不明となっている。

 残された4巻は昭和7年(1932年)、保存上の配慮から「絵画」と「詞書」に切り離し、巻物の状態から霧箱入れの額装に改められた。以後、尾張徳川家(現・徳川美術館、名古屋市)が「絵画」15面、「詞書」28面を所蔵。ほかの「絵画」4面と「詞書」9面は五島美術館(東京都世田谷区)所蔵となった(ただし、徳川美術館では、現在、額装から巻物に戻されている)。いずれも「吹抜屋台」と呼ばれる手法で屋根を省略し、室内の様子を上から見下ろすように描いている

 五島美術館で鑑賞された方が、「復元模写と両方を見比べて鑑賞できたのが楽しかった」「『鈴虫1』は庭の部分が黒い汚れとしみだけだが、復元模写ではきれいな川、美しい草花が咲き誇っていた」「『夕霧』では手紙を読む男性の後ろに不機嫌な表情の女性が立っていて、衣装から透けて見える白い腕がなまめかしかった」などと笑う。劣化してはいても復元模写と見比べる楽しみもある。

 ほかにも『御法』の庭に微かに残る植物の描線を観た方が復元模写を見て、「こんなに美しい植物が描かれていたのか」と感動の声を挙げているという。

五島美術館=東急百貨店、東急電鉄、京急電鉄等の創業者五島慶太が集めた一大コレクションを基に開館した私立美術館。6000坪もの広大な敷地に悠然と建っている。


源氏物語絵巻

昭和27年(1952年)に国宝指定
絵画15面・詞書28面は愛知県名古屋市徳川美術館所蔵、絵画4面・詞書9面は東京都世田谷区五島美術館所蔵

現存する日本最古の絵巻『源氏物語絵巻』は、平安時代中期(1000年ごろ)に紫式部が著した『源氏物語』を絵巻にしたもので、平安時代末期(1140年ごろ)に制作がはじまったといわれる。物語の詞書と絵を1枚1図で交互に繰り返し、室内の屋根を取り除いて描く「吹抜屋台」、デフォルメした人物「引目鉤鼻」の手法で作成された。全54帖も現存は18 帖分。

「源氏物語絵巻」第38帖「鈴虫〈一〉」:五島美術館所蔵
《中秋の名月(陰暦8月15日)の晩、出家後の女三宮のもとへ光源氏が訪ってくる場面》

 光源氏の妃、女三宮が柏木と密通し、男児の薫を産む。罪の重さから女三宮は出家する。不義の子と知る光源氏(48歳ごろ)だが、かつて自分も父の桐壺帝の妃で継母の藤壺宮と情を交わして冷泉帝をもうけたことから、女三宮の秘事を誰にも漏らさず、薫を実子として育てる。

 この場面は出家した女三宮(24〜25 歳)の住む六条院に設けられた念誦堂を光源氏が訪ねるところ。光源氏は女三宮に未練を残すが、宮は鈴虫の鳴き声に心を託した返歌で拒絶する。


「源氏物語絵巻」第39帖「夕霧」:五島美術館所蔵
《光源氏の嫡男夕霧が読む文を懸想文と思い込み、奪おうとする妻の雲くもいのかり居雁》

 雲居雁(31歳)は夫の夕霧(29歳)が日ごろから亡き柏木の妻落葉宮に思いを寄せていることに嫉妬を募らせていた。そのため夕霧の読む文が落葉宮からの懸想文と取り違え、奪おうとする。だが、この文は落葉宮の母一条御息所から娘への夕霧の真意を糺すものだった。結局、文は雲居雁に奪われ夫婦喧嘩へ。時代を超えて家庭を騒がす不倫騒動。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話』著:鈴木 旭

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話』
著:鈴木 旭


【Amazonで購入する】

国宝は「重要文化財のうち世界文化の見地からも価値の高いもの、類いない国民の宝」と定義され、現在1144件(2025年)が認定されている。
普賢菩薩像から伊藤若冲までの「絵画」、弥勒菩薩半跏思惟像など「彫刻」、日本刀などの「工芸品」、銅鐸・金印・古墳出土品などの「考古資料」、中尊寺金色堂など「建造物」、「書跡・典籍」、「古文書」、「歴史資料」の8分野がある。
本書では、歴史的背景や、史実にもとづきながら、見所、詳細な情報を掲げ、丁寧に解説。
知っておきたい、興味深い国宝を中心に、写真ではわからない驚きや不思議・謎に踏み込んで紹介する。

この記事のCategory

オススメ記事

「国宝の密度が日本一」!? 豪華絢爛中も外も国宝だらけ『平等院鳳凰堂』の歴史【眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話】

斜め向きの視線と強い隈取りに注目!『絹本着色十一面観音像図』11の顔に込められた救済のメッセージとは【眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話】

最澄と空海の交流を知る唯一の史料 、「久隔帖」と「風信帖」に込められた想いとは【眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話】

岡本太郎も絶賛の、新潟県で出土した縄文時代の芸術的土器とは!?【眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話】

何故か墓から出てこない、誰も用途を知らない謎の遺物とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話】

六本の腕で六道の衆生を救い出す! 観心寺「如意輪観音」の憂い顔に隠された祈り【眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話】

【縄文のミステリー】なぜ土偶は「奇怪な姿」なのか?国宝の女神たちに込められた命がけの願い【眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話】

「内臓」入りの仏像!? 1000年前の”五臓六腑”が明かす「生身のお釈迦様」の正体【眠れなくなるほど面白い 図解 国宝の話】

求人情報

インフォテキストが入ります