宿敵米国を破り、ベネズエラ優勝【二宮清純 スポーツの嵐】

南米大陸で初V

 第6回WBCは、連覇を狙う日本代表を準々決勝で下したベネズエラが、準決勝でダークホースのイタリア、決勝でホストカントリーで本命の米国を次々に撃破し、初優勝を飾った。

 試合前の会見でベネズエラのオマール・ロペス監督は「3000万人近い国民が勝利を待っている」と語っていたが、本当にそれが実現した。

 試合は後半にドラマが待っていた。0対2と劣勢の米国は、8回裏、2番ブライス・ハーパーがバックスクリーン付近に豪快な2ランを叩き込み、ひと振りで試合を振り出しに戻した。

 だがベネズエラも粘り強い。9回表、この回先頭の3番ルイス・アラエスが四球を選び、代走のハビアー・サノハがすかさず二盗を試みた。米国ベンチがチャレンジを要求するほど際どいプレーだったが、サノハの執念が上回った。

 それに応えたのが4番エウヘニオ・スアレス。米国の5番手ギャレット・ウィットロックから左中間にタイムリー2ベース。その瞬間、全員がベンチを飛び出し、喜びを爆発させた。

 試合を締めくくったのはクローザーのダニエル・パレンシア。2死から6番ローマン・アンソニーを空振り三振に切って取った瞬間、グラブを高々と宙に放り投げた。3年前の大谷翔平のパフォーマンスを彷彿とさせた。

 ベネズエラ移民の多いマイアミのローンデポ・パーク。いつもは陽気なロナルド・アクーニャ・ジュニアが泣いていた。MVPに選ばれたマイケル・ガルシアは、スペイン語で「ベネズエラがナンバーワンだ!」と誇らしげに人差し指を突き上げた。

 WBCの優勝トロフィーが初めて南米に渡った。南米といえば“サッカー大陸”である。ブラジルは5回、アルゼンチンは3回、ウルグアイは2回、W杯を制している。

 ベネズエラは南米サッカー連盟に加盟する10カ国の中で、唯一W杯本大会に出場したことがない。ボールは蹴るのではなく、投げたり打ったりする方が楽しい――。多くの国民がそう考えている。

 ベネズエラで野球が盛んになったのは、米国人の影響が大きい。1900年代前半に巨大油田が発見されると、採掘のために米国人技術者が流入し、野球を広めたと言われている。

 しかし、石油利権は悲劇をも生む。この1月には、米トランプ政権が首都カラカスを空爆し、ニコラス・マドゥロ大統領を拘束した。軍事攻撃の背景に、石油利権の奪取があったことは言うまでもない。

 そんな中でのベネズエラの世界一。しかも米国を倒しての歓喜。野球の神様は粋な演出をするものだ。

初出=週刊漫画ゴラク4月3日発売号

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