ヤクルト快進撃 犠打より強攻策【二宮清純 スポーツの嵐】

「イケイケ野球」で勝ち星掴む

  開幕前、大方の評論家や解説者が「最下位」と予想した東京ヤクルトスワローズが大健闘している。

 4月23日現在、16勝6敗でセ・リーグ首位。主催試合では8勝2敗と圧倒的な強さを誇っている。

 今季から指揮を執る池山隆寛は、現役時代、豪快なホームランと背中合わせのフルスイングによる三振をトレードマークにしていた。

 そこでついたニックネームがブンブン丸。よもや、それにこだわっているわけではあるまいが、選手たちにもチマチマした野球を求めない。

 その結果、開幕から9試合まで「犠打0」。今も、わずか2つ(同前)だけ。積極的な攻撃と走塁で、躍動感のある攻撃野球を展開している。

 池山と同じように犠牲バントを毛嫌いしていた監督がいた。98年、横浜ベイスターズを38年ぶりのリーグ優勝、日本一に導いた権藤博だ。

「野球は27個のアウトを取り合うゲーム。投手はひとつのアウトを取るのに四苦八苦しているんですよ。そんな時に送りバントをしてくれたら“しめた!”という気になりますよ。僕は監督をやっている時、相手がバントをしてくれたら“なんで敵を助けてくれるのか”と思っていたね。

 それにバントを企図したところで全部が全部成功するわけじゃない。とても勝つための戦術とは言えんでしょう」

 映画にもなった『マネー・ボール』の主人公ビリー・ビーン(現オークランド・アスレチックス野球運営担当副社長)も、犠打を忌み嫌った野球人のひとり。セイバーメトリクスなる統計分析の結果、犠打をすると得点期待値が下がるというデータを重視し、チーム戦術に落とし込んでいった。

 話を池山ヤクルトに戻そう。イケイケ野球で押し切ったのが、4月18日、神宮での巨人戦だ。

 2対3と1点ビハインドの9回裏。先頭の田中陽翔の長打で無死二塁。マウンドには昨年のセーブ王ライデル・マルティネス。送りバントで二塁走者を手堅く三塁に進めるかと思いきや、打席の丸山和郁は強振し、レフトオーバーの二塁打。これで同点。たたみかけるように丸山は意表をつく三盗。チームの勢いそのままに長岡秀樹がショートの横を抜き、サヨナラのランナーを迎え入れた。

 偶然にも隣の国立競技場ではMrs. GREEN APPLEのコンサートが開かれており、演出用の花火が直後に飛び出したサヨナラ打を祝福しているように見えた。

 春の珍事か、それとも……。

初出=週刊漫画ゴラク5月15日発売号

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