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「ハイキュー!!ファンにも見てほしい」元バレー男子日本代表河野裕輔がカナダ戦を分析【東京オリンピック】

ハイキュー!!ファンにも見てほしい盛りだくさんの見どころは

【河野裕輔のエール!第3回】第2戦カナダ戦を総力分析

元日本代表でJTサンダーズでも活躍した河野裕輔さんによるコラム。第3回は東京オリンピック第2戦のカナダ戦を振り返ります。石川祐希、西田有志、高橋藍、山本智大らにもスポットを当てての振り返り。ロサンゼルス大会以来の開幕2連勝はなぜ達成できたのでしょうか。


◆VNLの借りを返した1戦
7月26日のオリンピック第2戦の相手はカナダ。先月のVNL(バレーボールネーションズリーグ)でサーブで殴られまくって完敗した相手だ。あれから1か月、日本は素晴らしいバージョンアップを見せ、3-1の快勝でしっかりと借りを返した。では前回と今回の違いから見ていこう。

◆同じ轍は踏まない!しっかりと持ちこたえたレセプションアタック!
オリンピックに入ってから日本のレセプションは劇的に改善している。石川祐希、高橋藍、山本智大の3枚で担当するレセプションが、スタッツ上52%の成功率をたたき出した。VNLでの成功率がわずか7.9%だったことを考えると、素晴らしい進化である。特に戦術上狙われやすい高橋が、しっかりと持ちこたえたのが大きい。まだ19歳ながらも、日本のレセプションアタックを支える職人である。育成世代の学生などは彼のサーブレシーブからのBick(中央からの速いバックアタック)に入る動きなどは是非マネしてほしいと思うので、遊びの中でも構わないのでチャレンジしてほしい。

そして後述するが、OP(セッター対角でサーブレシーブを免除された攻撃専門のポジション)西田の完全復活により、シンクロ攻撃(同じタイミングでミドル、サイド両翼、バックアタックが攻撃態勢にはいる)の破壊力が増したことも好ポイントである。全部うまくいくわけはないし、うまくいく必要もない。レセプションアタック(サイドアウト)を100%とれば絶対に負けないのだ。だからこそ高確率でレセプションアタックを取って、サーブで攻めることが重要なのだ。

◆最後に咲(わら)う守備 トータルディフェンス
1セット目こそ接戦の末に落としたものの、決してディフェンスが機能していなかったわけではない。小野寺太志も山内晶大も、ゲス(ヤマカン)にならずに、しつこくブロックの間を消しに行く地道なプレーを黙々とやってくれた。その結果カナダは「気持ちよく」攻撃できるチャンスが減少し、それは試合後半にカナダのセッターが早く打たせようとして「トスが早い・低い」になり、さらにブロックが機能するという結果を演出した。


そしてこの日の勝利の立役者。リベロ山本の鉄壁のディグにも表れた。早いトスを無理にラインに打ってアウトになるよりも、ブロックを抜いたクロスを打つことが多かったカナダスパイカー陣。しかしそこは山本が待っているエリアだ。彼の持ち味は全身をクッションにして打球の勢いを殺すディグと、ギリギリのボールを最後までコントロールするという高い意識。ただ上げるのではなく少しでも上質な返球を行うことで、チームの攻撃の起点となることができるハイレベルなリベロだ。ぜひ見逃し配信でラリー後の「オレ!オレ!」というドヤ顔を愛でてほしい。

日本はリードブロックとフロアディフェンス。この2つが後半になればなるほどかみ合い、文字通り「最後に咲う」ディフェンスが構築できた。

漫画「ハイキュー!」では最後に咲うのはリードブロックだが今の日本で最後に咲うのはトータルディフェンスであるように思う。

◆完全復活!西田有志!!
この男が帰ってきた。日本の得点源の一人だ。読者の皆様は2019年のWC(ワールドカップ)、対カナダ戦での5連続サービスエース(正確には1本は崩して山内がブロック)を覚えている方もいらっしゃるだろう。この日、あのジャンプが帰ってきた。ベネズエラ戦ではまだジャンプが本調子ではなさそうであったがこの日、空中で一瞬止まるあのジャンプが帰ってきた。

西田・石川・高橋の3枚が、ネットの幅9mいっぱいに使ってミドルを含む4枚攻撃を仕掛ける日本のシンクロ攻撃が完全に機能していた事と、彼自身の決定率が50%を超えていることからも完全復活といっていいであろう。

◆出てくる出てくるスーパープレー!
ここでトリックプレーを紹介したい。石川/高橋が2本目にコート中央からバックアタックを打つと見せかけてサイドにリセット、3本目を前衛のサイドスパイカーが決めるというトリックプレーだ。カナダ戦においては高橋のこのトリックプレーがなんと石川ノーマークというシチュエーションを演出。素晴らしいトリックプレーであった。

そして河野的この日のベストプレーは4セット目終盤に起こった。

4セット目23-19の場面。カナダのMBの攻撃に対し山内がディグで引っ掛けるもアンテナの外側から相手コートへ、それを高橋が追っていき石川へアンダーでバックアタックのセット。少しコート中央に寄りすぎてしまったこのセットを石川が走り込み、なんと片足ジャンプでカナダの3枚ブロックをかわして決めるという離れ業を見せてくれた。

ひっかけた山内も以前では上がらなかったボールを上げているし、高橋もただ繋ぐのではなくセットにしようとしている。それを意地でも決めきる石川の勝負強さ。この全員が1点を取るためにベストを尽くし続ける意識が今の日本の最大の武器ではないだろうか。

◆総括して
この日はVNLの雪辱戦ということもあり非常にドキドキしながら映像を見たが、ベネズエラ戦のような素晴らしいレセプションアタック、トータルディフェンスが機能しておりコンディションも非常に良いように見えた。今の日本は選手それぞれが自分の役割を認識し、チーム戦術の効果最大化のために必要なプレーをすることが高いレベルでなされている。

今からさらに強豪国と当たっていくが、勝利へのストーリーは非常にシンプルだ。

なぜなら日本がやることの大筋は常に同じであり、サーブで殴る、トータルディフェンスを機能させるなどの「ゲームにあたってのルール」が一つだからである。

その中で狙うポイントを変える、ブロックの付き方を変える、などは「オプション」として処理される。この整理されたゲーム戦術こそが今まで日本が求めていたものなのかもしれない。

まだまだ熱戦の続くオリンピック。
1歩1歩着実に歩んでいこう。
まずは最初の目標に向かって。

河野 裕輔 プロフィール

河野 裕輔(かわの ゆうすけ)

1975年8月1日生まれ ポジション OP.OH 古河4ますらおクラブ-古河2中-足利工大附高(現足利大附高)-中央大学-JTサンダーズ(現JTサンダーズ広島) 現在社業の傍ら、V.TVにて解説者、オーカバレーボールスクール埼玉校にてコーチ業を勉強中。

文責:河野裕輔

写真:FIVB

情報提供『バレーボールマガジン』
バレーボール観戦の感動や面白さ、そして選手の思いを一人でも多くのファンに伝えたい――。

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