なぜクローゼットは白黒紺ベージュばかりになる?服の基本4色と「黒」のトリック〜ケネディ大統領の勝敗を分けたファッションの力〜

先月発売されたアイテム 歴史 スタイル 専門用語 デザイン すべてがイラストでわかる ファッション事典の著者、文化学園大学教授・高村是州先生への全10回にわたる特別インタビューがスタートします。第1回は、私たちが無意識に選んでいる「服の色」に隠された秘密に迫ります。

――早速ですが、服を選ぶとき、無意識に白黒や紺、ベージュなどを選んでしまいがちです。これには理由があるのでしょうか?

高村先生:人は直感的に「自分の肌を美しく見せたい」と思って服の色を選びます。ファッションとは自己演出でもあるため、元気で血色よく見えることが、服選びの重要なポイントになるのです。

たとえば「紺(ネイビー)」という色は、「マゼンタ」と「シアン」という色からできています。一方で、日本人などの東アジア系の人の肌の色も「マゼンタ」と「イエロー」で構成されています。つまり、紺色の服と人間の肌には、共通して「マゼンタ(赤み、つまり血の色)」が含まれているのです。

服として紺色を着ると、このマゼンタが共鳴し合って肌の赤みが強調され、血色を良く見せてくれる効果があります。しかも色が濃いため、相対的に肌の明るさが目立つというメリットもあります。制服に紺色が使われることが多いのは、肌に合う理にかなった色だからなのです。

また、「白」はレフ板のような「リフレクト効果」があります。胸元で光を反射して顔色を明るくきれいに見せてくれるので、清潔感を出すには非常に使いやすい色です。

――ベージュや茶色も基本色として使いやすいですよね。

高村先生:ベージュは「ネイキッドカラー(肉体に近い色)」とも呼ばれ、肌色に近いため自然に調和しやすい色です。しかしその一方で、肌の色味そのものを強調して見せる傾向もあります。そのため、日焼けによって肌の黄みが強くなりやすい男性がベージュを着ると、顔色がくすんで見える場合があります。一方で、血色感、つまり赤みのある肌とは相性が良く、メイクによって血色感を整えることの多い女性の方が、ベージュを美しく着こなしやすい傾向があると言えるでしょう。

茶色は髪や瞳の色とも近く、人との親和性が高い色です。肌より濃い色なので、肌を明るく見せながら、同時に落ち着きや安心感、品のある印象を演出することができます。

ファッションでは、こうした色の効果を意識しながら、見せたいイメージに合わせて使い分けることが大切だと思います。

――ビジネスでよく使われる「グレー」や「黒」はどうでしょうか?

高村先生:グレーを着るなら、中間より濃い「チャコールグレー」がおすすめです。濃い色で無彩色なので肌の彩りや明るさを際立たせてくれます。

有名な例として、1960年のアメリカ大統領選におけるケネディとニクソンのテレビ討論会があります。

当時はまだモノクロ放送でしたが、ケネディは濃い色のスーツを着用したことで輪郭や動きが際立ち、若々しく力強い印象を与えました。対してニクソンは明るいグレーのスーツを着ていたため背景に溶け込んでしまい、存在感が薄く見えたと言われています。この視覚的な印象の差は、テレビ時代におけるイメージ戦略の重要性を象徴する出来事となりました。

ただ、薄いグレーがダメというわけではなく、「今日はあまり目立ちたくない、そっとしておいてほしい」という気分の時には非常に有効です。

――我々がつい着てしまいがちな「黒」はいかがですか?

高村先生:黒はもともと喪服の色であり、非常に扱いが難しい色なんです。1920年代にはシャネルがリトルブラックドレスで、1980年代に山本耀司氏やコムデギャルソンが「黒の衝撃」としてモードの世界に持ち込み、タブーを打ち破りました。

日本の街では全身黒でまとめたスタイルとして定着し、彼らは「カラス族」といわれた。

全身を黒で統一するスタイルは、モード性や個性を強く印象づける傾向があります。一方で、黒いスーツに白いシャツを組み合わせることで、冠婚葬祭にも通じるフォーマルウェアとして機能するようになります。つまり、黒のリクルートスーツは、就職活動という人生の節目を一種の“儀式”として共有し、誠実さや社会性を視覚的に表現していると言えるでしょう。

とはいえ、日常のコーディネートに黒を部分的に取り入れるのは定番です。こうした色のパワーや歴史的背景を知っておくと、毎日の服選びがさらに面白くなるはずですよ。

(第2回へ続く)

【書誌情報】
『アイテム 歴史 スタイル 専門用語 デザイン すべてがイラストでわかる ファッション事典』
著者:高村是州


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著者は文化学園大学教授の高村是州氏。長年に渡ってファッションを研究し、教鞭をとってきた中で培われたすべてを詰め込んでくれました。

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また、「ファッションは4つに分類される」といった学問的視点から、流行をつくる業界の仕組みまで、ファッションの構造を多角的に解説。
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【著者プロフィール】
高村是州(たかむら・ぜしゅう)

ファッションイラストレーター、ファッションスタイル評論家。文化学園大学 教授(大学院アドバンストファッションデザイン専修、服装学部ファッションクリエイション学科)。
長年に渡ってファッションを研究し教鞭をとってきた中で培われたすべてを本書に詰め込んでいます。 著書に『ザ・ストリートスタイル』『ファッションスタイル・クロニクル』『ファッションデザインテクニック』(以上グラフィック社)、『ファッション・ライフのはじめ方』(岩波書店)など多数。

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