職場のノースリーブをどう思う?「萌え袖」と「肌見せ」に隠された社会性のルール

アイテム 歴史 スタイル 専門用語 デザイン すべてがイラストでわかる ファッション事典』の著者・高村是州先生への特別インタビュー第3回。今回は、若い世代に人気の「萌え袖」や「肌見せ」が与える視覚効果と、ファッションが持つ社会性について深く切り込みます。

――最近、「萌え袖」や極端な肌見せが流行していますが、これにはどんな視覚効果があるのでしょうか?

高村先生: 服において関節をどう見せるかは非常に重要で、とくに腕を長く美しく見せるには「手首の位置」がポイントになります。

手首の位置をあいまいにすることで、実際の腕の長さに錯覚を起こさせることができるのです。

あと萌え袖は、服に包まれているイメージが強くなるので腕を華奢に見せ、幼さや親しみやすさを演出します。また、指先に視線がフォーカスされるので、ネイルとの相性も良く、所作そのものを「かわいく見せる」という視覚的な効果もあります。

袖のシルエットは、デザインに大きな変化を及ぼし、機能的な面においても重要な部分。

また、腕はファッションにおいてもっとも露出の自由度が高いパーツでもあります。下半身は下着が見えてしまうため限界がありますが、腕なら肩から指先まで自由に変えられます。

だからこそ、手が隠れるほどの「萌え袖」にして腕を長く見せるといった遊びが生まれやすいのです。

半袖より「長袖の腕まくり」がきちんとして見える不思議

――腕の出し方によって、印象も変わるのでしょうか?

高村先生:大きく変わります。服というのは「その人の社会性」をあらわすものです。服で覆われている部分は社会性を、肌が出ている部分は「その人らしさ(生々しさ)」をあらわします。

たとえば、ビジネスの場で、暑いときに、長袖のシャツを腕まくりしているほうが、きちんと半袖のシャツを着るよりも、落ち着いていて社会性が高く見えるといわれてます。「長袖という社会性がより高い服をまとっている」というベースがあるからです。

――職場ルールなどでノースリーブがNGとされることがあるのはなぜですか? 好きな服を着ればいい、といった議論も見かけますが。

高村先生: それは、腕の付け根や足の付け根などは、その人の「プライベートゾーン」に直結する部分だからです。小学校の性教育でも「ここは自分だけの大切な場所」と教わるように、そこはその人だけのパーソナルスペースです。

そのため、肩を露出するノースリーブは、身体的な魅力や個性を強く演出することができます。

ビジネス?プライベート? 服と社会の関係

高村先生:しかし、公的な場では社会性も求められます。一般的な会社でノースリーブが議論されることがあるのは、プライベートゾーンに近い部位の露出が、ビジネスシーンにおける節度や距離感とのバランスを難しくするためです。

――たとえ規則だったとしても、ノースリーブの着用NGって注意しづらい気がします。

高村先生:プライベートゾーンに関わる話なので、「そういう目で見ていたのか」と誤解されるのでは、などと思ってしまい伝えにくいかもしれませんね。もし職場でそのようなルールがあるのであれば、まずは今お話ししたようなことを概念として共有することで理解を得やすくなるかもしれませんね。

服というのは、自分の内面や価値観を自分に代わって相手に伝えてくれるものです。だからこそTPOに合わせて、「自分をどう見せたいのか」と服装がきちんとリンクしていることが大切だと思います。

(第4回へ続く)

【書誌情報】
『アイテム 歴史 スタイル 専門用語 デザイン すべてがイラストでわかる ファッション事典』
著者:高村是州


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著者は文化学園大学教授の高村是州氏。長年に渡ってファッションを研究し、教鞭をとってきた中で培われたすべてを詰め込んでくれました。

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【著者プロフィール】
高村是州(たかむら・ぜしゅう)

ファッションイラストレーター、ファッションスタイル評論家。文化学園大学 教授(大学院アドバンストファッションデザイン専修、服装学部ファッションクリエイション学科)。
長年に渡ってファッションを研究し教鞭をとってきた中で培われたすべてを本書に詰め込んでいます。 著書に『ザ・ストリートスタイル』『ファッションスタイル・クロニクル』『ファッションデザインテクニック』(以上グラフィック社)、『ファッション・ライフのはじめ方』(岩波書店)など多数。

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