パリコレの服は奇抜すぎる?ハイファッションとリアルクローズの本当の関係

テレビやネットで見るファッションショーの服は奇抜すぎて街では着られないと思っていませんか?そこには「流行なんて関係ない」という人まで巻き込む、驚くべきファッションの仕組みが隠されています。文化学園大学教授・高村是州先生の特別インタビューです。

――ファッションショーの服は一般の街で着る服(リアルクローズ)とは無関係に思えますが?

高村先生:ファッションショーの服を見ると「こんなの着られない」と思うかもしれません。それは「自分が着る想定」で見ているからです。

しかし、あれは人類の「美意識の拡張」のためのトライアンドエラーの場なのです。「人をどう美しく見せたいのか」という視点で見ると、いろんなヒントが散りばめられていることに気づきます。

ファッションショーの「本当の目的」とは?

そこで提案された新しいエッセンスは、翻訳されてリアルクローズとして私たちの手元に登場します。たとえば、コレクションで服に切れ込みを入れ、時には裸よりも露出を意識させる「カットアウト」というデザインがありました。しかし、リアルクローズでは、デコルテや肩などに部分的に取り入れることで、肌見せのコンセプトを残しながらも日常にも馴染みやすく誰もが着やすい形に翻訳されて届いているのです。

――いろんなブランドが一斉に似たようなトレンドを打ち出すのはなぜですか?

高村先生:コレクションの1年前には「生地見本市」というものがあります。世界のデザイナーたちがそこで未来を照らす生地を選ぶため、自然と服のイメージや色彩にも共通した空気感が生まれていくのです。

たとえば「ランジェリー(下着)に使用するようなレースの生地」を取り入れるなら、本来はいちばん内側に着るはずのものを、あえてカーディガンやソックスのようないちばん外側に着るアイテムと組み合わせたら面白いんじゃないか……といったように、長年ファッションを携わっている人たちは、時代の空気感や構造的なロジックを共有しているため、自然と共通した感覚を持つようになるのではないでしょうか。

安い=劣化版じゃない! リアルクローズが持つ本当の価値

――「流行なんて関係ない」という意見もありますが?

高村先生:「流行なんて関係ない、自分の好きなものを着ているだけだ」と言っていても、意外と流行のデザインやシルエットを取り入れていたりするものです。

どんなに自分軸で選んだとしても、市場に並ぶ服そのものに時代性が反映されている以上、私たちは無意識のうちに流行と関わりながら服を選んでいると言えます。

そして、それは決して悪いことではありません。「ちゃんと今を生きていて、社会の空気をいっぱい吸収している証拠」なんです。だから「『今』を行きている」という素晴らしいことではないでしょうか。

――リアルクローズよりハイファッションの方がすごいのでしょうか?

高村先生:安いからといって、全てが劣っているのではありません。私は「デザインの最大公約数版」と思っています。

ファッションデザイナーが考えた最先端のエッセンスを、みんなが日常のなかで楽しめるようにアレンジしてくれているのです。


シャネルなどのハイファッションと、ユニクロなどの低価格なリアルクローズは、互いに影響を与え合いながら進化しています。

先ほどの透けるカーディガンも、直球のランジェリーのままでは肌の露出が多くて着こなすのは難しいですよね。しかし、「インナーの上に着るアウター」として形を変えて届けてくれたことで、若い世代はキャミソールの上に着て肌見せを楽しみ、年代が上なら半袖Tシャツの上に着て露出を抑えながら上品に透け感を楽しむといったように、自分に合わせた着こなしで幅広い年代の人が楽しめるようになっているのです。

どんな人でも服を楽しめる環境を広く作っておくことはファッション文化の裾野を広げるうえでも重要なので、リアルクローズは私たちの生活を豊かにしてくれる大切な存在です。でも、「なぜこれが流行るんだろう」と、その本質を知りたくなったら、一度ラクジュアリーブランドの服を着てみてください。流行の発信源に触れることで、見えてくるものがあると思いますよ。

(第8回へ続く)

【書誌情報】
『アイテム 歴史 スタイル 専門用語 デザイン すべてがイラストでわかる ファッション事典』
著者:高村是州


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著者は文化学園大学教授の高村是州氏。長年に渡ってファッションを研究し、教鞭をとってきた中で培われたすべてを詰め込んでくれました。

各スタイルのルーツや歴史的背景をひも解きます。現代のトレンドは代表ブランドのアイテム名とともに紹介し、カルチャーとの結びつきを細部まで再現。日本のトレンド史も充実しています。

また、「ファッションは4つに分類される」といった学問的視点から、流行をつくる業界の仕組みまで、ファッションの構造を多角的に解説。
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【著者プロフィール】
高村是州(たかむら・ぜしゅう)

ファッションイラストレーター、ファッションスタイル評論家。文化学園大学 教授(大学院アドバンストファッションデザイン専修、服装学部ファッションクリエイション学科)。
長年に渡ってファッションを研究し教鞭をとってきた中で培われたすべてを本書に詰め込んでいます。 著書に『ザ・ストリートスタイル』『ファッションスタイル・クロニクル』『ファッションデザインテクニック』(以上グラフィック社)、『ファッション・ライフのはじめ方』(岩波書店)など多数。

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