唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』第28回 セリでの馬の値段や評価&レベルの違う馬主の存在を伝授

 毎年セレクトセールでは、何頭もの億を超える値段の馬が落札される。今回はなぜ馬の値段がそこまで上がるのか? 馬の評価はどう決まるのかについて、俺なりの考えを伝授したい。

血統だけでセリでの値段が決まるわけではない

 セレクトセールでは、数億円の価格で取引される高額馬が毎年何頭も出ているが、決して血統だけで値段が吊り上がっているわけではない。
 明らかな良血馬はそれだけで値段が上がるけど、それ以外の馬でも社台やノーザン系では血統が悪いという馬はいない。

 ではなぜ高値が付くのかというと、馬の購入を検討している人はセリの前に牧場に見に行くもの。リザーブ価格は事前に書いてあるので、セリの1ヶ月前くらいから自分が買える価格帯の中から目星を付ける。

 実際に北海道で馬を見て回ると、何度も見ているような人なら良い馬は良いとわかる。その馬が走るか走らないかは別問題だけど、みんなが同じように評価をして欲しがるので、その馬の値段が上がることになる。

高値で取引されても走らないことも少なくない

 競馬歴がソコソコある人ならわかっていると思うけど、高値で落札されても走っているケースの方が少ないのが現実。
 例えば古い話だけど2006年生まれの父キングカメハメハ、母は2001年のエリザベス女王杯を制したトゥザヴィクトリーで、弟に重賞5勝のトゥザグローリーを持つディナシーは牝馬にもかかわらずセレクトセールで6億の値が付いたが、デビューすらできなかった。引退後は9頭の仔を出産したけど、その中からも重賞ウィナーは出ていない。

 何億円を出しても、精神的な理由やそもそも脚が遅くて全く活躍できないことが多々ある。逆にキタサンブラックのように、仔馬の頃にはあまり周りからは評価されず、350万円で売却されても大活躍することだってある。

キタサンブラックは現役時代に18億円超を稼ぎ、種牡馬としてもイクイノックスやクロワデュノールを輩出するなど大活躍

 良い馬だなと多くの人が評価しても、速く走れるかは当然わからないから期待値で値段は決まる。またお金を持っている人の中には、3000万円の馬を買うよりも1億円の馬を買うほうが周囲からスゴいと言われて気持ちがいいからというケースもある。馬主をやる人は社会的に地位の高い人が多いから、そういう価値観もあるのだろう。

・主取りになっても終わりではない

 セリで誰も買い手が付かなかった馬は”主取り”と言われ、売り主が引き取ることになる。
 だけど、買い手側は再上場の交渉を出すことができて、売り主が承諾すれば再度売買の機会が設けられる。例えば、最初の売り手の希望価格の2000万では売れなかったけど、「1500万でなら買いたいから出してよ」という要望があればね。もし、売り主がその価格なら売りたくないと思ったら、ダメと言えばいいだけの話。
 ちなみにロードカナロアやデアリングタクトなんかは主取りになった馬だから、人の馬を見る目なんていいかげんなもんなんだよ。

GⅠを6勝もしたロードカナロアはセレクトセールで誰からも買われることがない馬だった

・金子真人オーナーは他の人とはレベルの違う馬運の持ち主

 金子真人オーナーは、GⅠを7勝したディープインパクトをはじめ、アパパネ、キングカメハメハ、クロフネなど多くのGⅠウィナーを所有してきた。大馬主でたくさんの馬を所有していても、なかなかあれだけの活躍馬を引き当てることは難しい。

2025年のオークスもカムニャックで勝った金子真人オーナー(左から2人目)

 金子真人オーナーはセレクトセールで馬をあまり見ていないと言われている。では、何を根拠に買う馬を選んでいるのかは俺にもわからない。ただ、馬を見る能力に長けている右腕的な人がいるわけでもないようで、セリの前に誰とも連絡を取らず閉じこもって何日かかけて決めるらしい。
 結果的に数知れずの活躍馬を引き当てているわけで、ほかの人にはないアンテナがあるのだろうし、あとは馬に好かれていて馬運が強いとしか言いようがない凄い人だ。

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