【ザ・シェフに学ぶ課題解決力】顧客の「本当の課題」はどこにある?天才料理人・味沢匠がCM撮影のデッドロックを打ち破った「本質思考」

ビジネスシーンにおいて、ステークホルダー(広告主、制作会社、演者)の思惑がぶつかり合い、プロジェクトが頓挫することは珍しくありません。

名作マンガ『ザ・シェフ』の第21話「真剣勝負①」は、まさにそんな「現代のビジネス現場」にも通じる、新製品プロモーションのデッドロック(行き詰まり)から始まります。

「社運をかけた新製品」と「クリエイティブの妥協」というビジネスの壁

食品会社が「社運をかけた」という新型ビーフシチューのCM撮影。

しかし、主演の国民的女優・蒲レイ子の演技に対して、スポンサーの社長から「やり直し」の非情な命令が下ります。

「あの表情ではわが社の製品は売れん」

「せっかく高い出演料を払って人気女優を起用しても、これでは意味がない」

イライラを隠せない女優、予算とスケジュールに追われる制作プロデューサー、そして妥協を許さない広告主。

表面的な問題は「女優の演技力(スランプ)」や「機嫌の悪さ」にあるように見えました。

演出の「フェイク」を看破し、本質的な課題に切り込む

この窮地を救うために召喚されたのが、フリーランスの天才シェフ・味沢匠です。

依頼は「彼女に本当に美味いシチューを食べさせて、美味い表情を作らせること」。

しかし、ここで味沢は「私が作った料理を、お宅の新製品だとして視聴者を騙すやり方は、好きになれません」と、安易な解決策(替え玉)を拒絶します。

スポンサー側は「ビールの代わりに麦茶を使うような、広告業界の一般的な演出(フェイク)だ」と自己正当化を図りますが、味沢の視座はより高いところにありました。

味沢は、蒲レイ子が「スランプ」と叩かれ日常的に強いストレス(イライラ)に晒されていること、そしてCM制作チームが彼女を「ただの広告塔」としてしか扱っていないことに気づいていたのです。

ここで味沢が要求した「大女優とのデート」という条件は、単なるワガママや好色な欲望ではありませんでした。

彼女をがんじがらめにしている「女優・蒲レイ子」という鎧を外し、一人の人間としてリラックスさせなければ、いかなる極上料理を食べさせても「心の底からの笑顔」は生まれないという、高度なユーザー・インサイトに基づいた戦略だったのです。

顧客を顧客として扱わず、一人の「人間」として向き合う解決力

味沢がレイ子を連れて行ったのは、怪しげなモーテル街の向かいにある、夜景が美しく見える小さな洋食店でした。

過密なスケジュールとメディアの批評に疲れ果てていた彼女にとって、それは「誰の目も気にせず、ただ美味しい料理(牛舌シチュー)を楽しめる空間」そのものでした。

結果として、彼女は頑ななプライドを和らげ、心からの笑顔を取り戻します。

このエピソードがビジネスパーソンに教えてくれるのは、「課題の表面的な症状(表情が悪い)にアプローチするのではなく、その原因となっている構造的・心理的要因(ストレス・環境)を特定し、根本から解決する」というアプローチの重要性です。

プロフェッショナルとして安易なフェイク(妥協)に逃げず、提供する価値の「本質」にこだわり抜く味沢匠の姿勢は、すべての現代ビジネスパーソンにとって深い示唆を与えてくれます。

<第1話:幻の料理人①>を読むにはこちらから
https://love-spo.com/article/the-chef_001

『ザ・シェフ』次回へ続く!

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【書籍情報】
『ザ・シェフ』
原作:剣名舞
劇画:加藤唯史

法外な報酬を要求するが、依頼人の希望に応じて料理を作り上げる天才シェフ・味沢匠(あじさわ・たくみ)の活躍を描いた料理劇画。石油産出国であるパミール王国でその全権を握る大臣は、外務省関係者がもてなす帝都ホテルの晩餐をほとんど食べ残して帰る。そこで「幻の料理人」と呼ばれる天才シェフ・味沢匠が、大臣を満足させる晩餐を作るように依頼されるが、味沢はその報酬として500万円を提示して……!?

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