【万葉集】富士山は「恋の山」だった?1300年前の日本人が噴火に重ねた熱い想い【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

『万葉集』には富士山を詠んだ歌が複数残されている

富士山の噴火も詠んだ?

 『万葉集』は奈良時代に成立した日本最古の歌集です。天皇や貴族をはじめ、さまざまな身分の人々が詠んだ約4500首の歌が全20巻に収められています。そのうち、富士山をモチーフとした歌は11首。なかでも特に有名なのが、山部赤人による「田子の浦ゆ うち出てみれば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける」という歌です。『百人一首』にも収められているので、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

 この歌は本来、富士山の神々しい姿を歌った「天地の 別れし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 富士の高嶺を……」と続く19句からなる長歌(5・7を繰り返し、最後に5・7・7で結ぶ長い歌)に添えられたものです。

 この山部赤人の2首に加え、高橋虫麻呂による歌が3首、さらに「詠み人知らず」とされる作者不明の6首で、合わせて11首です。『万葉集』全体でも、作者不明の歌は半数近くを占めており、特定の階層に限られない多様な人々の歌が収録されている歌集だとわかります。

 富士山を詠んだ作者不明の歌には、いずれも恋の歌であるという共通点もあります。富士山は遠くから仰ぎ見る神聖かつ雄大な存在であるだけでなく、当時の人々の日々の暮らしと強く結びついた存在でもあったのでしょう。

『万葉集』収録の代表的な富士山の歌

田子の浦ゆ うち出てみれば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける(山部赤人)

【現代語訳】田子の浦から見はらしのよいところに出てみると、富士の高嶺に真っ白な雪が降り続いているなあ

富士の嶺に 降り置く雪は 六月の十五日に 消ゆれば その夜降りけり(高橋虫麻呂)

【現代語訳】
富士山に降る雪は、毎年六月十五日に消えると、その夜からまた降り始めるのです

我妹子に 逢ふよしをなみ 駿河なる 富士の高嶺の 燃えつつかあらむ(作者不明)

【現代語訳】
あの娘に逢う機会がなかなかないので、私の心は富士山のように燃え続けていくのでしょうか

妹が名も 我が名も立たば 惜しみこそ 富士の高嶺の 燃えつつわたれ(作者不明)

【現代語訳】
あなたの名も私の名も、ひとのうわさに立ったら悔しいから、富士の高嶺のように恋に燃えて生きていくのですよ


くり返し和歌に詠まれる名所を「歌枕」といいます。「田子の浦」も有名な歌枕のひとつですが、当時と今では場所や範囲も異なります。ともあれ富士山の絶景を望める場所であることにかわりはなく、浮世絵など名所絵の舞台にもなっています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話』監修:富士学会

【監修者情報】
富士学会
富士山と、その関連地域を対象として、自然科学から芸術、歴史、宗教の人文科学までを広く網羅し、富士山にちなんだ教育や、噴火を想定した防災など、総合的な領域の研究を進めている。富士山の本質と全体像の探求、関連地域の環境保全、防災、活性化などを目的として、学術大会・討論会・講習会などの開催、会誌・図書などの出版、関連教育・文化活動への協力と支援などをおこなっている。事務局は東京の日本大学文理学部地理学教室に置かれている。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話』
監修:富士学会


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監修/富士学会
富士山と、その関連地域を対象として、自然科学から芸術、歴史、宗教の人文科学までを広く網羅し、富士山にちなんだ教育や、噴火を想定した防災など、総合的な領域の研究を進めている。富士山の本質と全体像の探求、関連地域の環境保全、防災、活性化などを目的として、学術大会・討論会・講習会などの開催、会誌・図書などの出版、関連教育・文化活動への協力と支援などをおこなっている。事務局は東京の日本大学文理学部地理学教室に置かれている。

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