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腸内には100兆個も細菌がいるって、ホント?【微生物の話】

Text:山形洋平

腸内細菌総重量は2㎏入りのコメ袋の重さだ

人の腸内には、数千種類、100兆個以上の細菌が存在すると言われています。これから計算すると、人ひとりが持つ腸内細菌は、1.5〜2㎏にもなります。腸内細菌はランダムに腸のなかに生育しているわけではなく、それぞれがある程度決まった場所に集団を形成して生育しています。この集団のことを腸内細菌叢(さいきんそう)(腸内フローラ)と呼んでいます。腸内細菌叢は、いったん形成されると比較的固定されるため、あとから食物などと一緒に入ってくる病原菌などが割り込むことはできず、先住者の腸内細菌によって排除されてしまいます。

食べ物を食べると胃を通過した後、十二指腸、空腸、回腸(ここまでが小腸)、大腸へと運ばれます。胃では、胃酸があるため、内容物1gあたり、10個程度しか生きた細菌は見つかりませんが、十二指腸、空腸ではそれぞれ1000〜10000個程度、回腸になると急激に増え1gあたり数千万〜数億個、大腸では100億〜1000億個の細菌が生育しています。

もちろん、これ以外に死んだ細菌も大量に存在しています。十二指腸付近では、食べ物と一緒に取り込まれた酸素が存在するため、乳酸菌など酸素に対する耐性を持つ通性嫌気性菌が優勢ですが、大腸まで進むと酸素はほとんどない環境になるので、酸素に耐性のないビフィズス菌のような偏性嫌気性菌が増えてきます。1000種以上の微生物で形成されている腸内細菌のうち大部分が嫌気性細菌で、30〜40種類くらいの細菌が細菌叢のほとんどを占めています。

人は、生まれてきたときは無菌状態ですが、出生直後から、細菌と一緒に暮らしはじめます。乳幼児期はビフィズス菌[Bifidobacterium属(ビフィドバクテリウム属)]が優勢な状態で腸内細菌叢は安定していますが、離乳期になるとBacteroides属(バクテロイデス属)、Eubacterium属(ユーバクテリウム属)が増加します。さらに中年期を過ぎるとビフィズス菌が減少し、ウェルシュ菌が増加します。

ビフィズス菌がいると大腸で乳酸と酢酸が生成され腸内の環境が整えられます。いっぽう、ウェルシュ菌は、腐敗菌の一つでアミノ酸からアンモニア、アミン、フェノールなどの有害物質を生成します。ウェルシュ菌の増加が、腸内の老化と考えられており、体内で処理できない量の有害物質が生産されると全身に影響が及びます。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 微生物の話』
著者:山形洋平  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1961年生まれ。東京農工大学農学部農芸化学科卒業。東北大学大学院農学研究科農芸化学専攻(博士課程後期)修了。東北大学農学部助手、東京農工大学共生科学研究院准教授、東京農工大学大学院農学研究院准教授を経て、現在は東京農工大学大学院農学研究院教授。農学博士。趣味は、醗酵食品の食べ歩きと醸造飲料の飲み歩き。


「微生物」は私たちの身の回りにあふれている! ウイルス、細菌(バクテリア)、菌類(酵母、カビ、キノコ等)など、とても小さく顕微鏡でなければ見えないけれど、私たちの生活のさまざまに関係、影響している。「ウイルスの正体は?」「毎日のように口にする味噌、醤油、酢などの調味料、またビール、ワイン、日本酒をつくる醗酵とは?」「私たちのお腹の中に棲む数百種類100兆個もの細菌の役割は?」———地球上に最初に誕生し、ヒトをはじめとするあらゆる生物の進化や暮らしに影響を与え続けてきた存在でありながら、まだまだ多くの謎や不思議に包まれいる「微生物」。その謎と不思議をわかりやすく図解で伝える。微生物のことがわかると、生活上のいろんな疑問もすべて納得、解決する!

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