近代に変革された解剖学の研究法
近代科学として解剖学が始まったのは、16世紀以降のこと。人体の謎に挑んだベルギー生まれのアンドレアス・ヴェサリウス(1514-1564)が1543 年に出した、『ファブリカ』という医学書が、そのはじまりです。
18歳で母国を離れ、パリ大学で医学を学んだヴェサリウスは、解剖の授業で、当時は一般的だった分業制の解剖に疑問を抱きます。その当時は、古代ローマのガレノスの医学が信じられ、人体の構造を見ることは重要ではありませんでした。解剖は、執刀する「執刀者」と、棒で指示す「示説者」、解説を行なう「解剖学者」で行なっていたのです。
しかし、実際の体のなかをよく見ていくと、権威ある書物と合わないこともあります。自分の手で切り開き、確かめなければほんとうの姿はわからない。ヴェサリウスはそう考えました。その後、解剖学の研究のためにイタリアのパドヴァ大学に入学し、23歳で教授に任命されます。彼は大学の授業で数多くの遺体をみずから解剖し、観察に基づいて考察・研究を続けるかたわら、膨大なページの書物を執筆しました。
それが、28 歳のとき出版した『ファブリカ』です。本書は学術的価値が高かっただけでなく、解剖図の美しさと正確さは、現在の私たちが見ても驚かざるを得ません。こうして、現在にいたる近代医学の歴史は自分の手で解剖し、自分の目で観察するというヴェサリウスによって切り開かれました。そして、彼をきっかけに発展した解剖学の研究は形を変え、今なお続いています。
シリーズ累計300万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ
図解シリーズは、文章と分かりやすい図で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。
図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!
気になる中身を少しだけご紹介!耳はどんなふうに働いて音を感じるの?
空気の振動を電気信号に変換させ聴覚を生む
いくつもの器官を通って脳に辿り着く
耳の最初の役目は、音を集めることで、そのはたらきをしているのは外側に張り出している「耳介」です。耳介は、音を集めるアンテナで形がぼこぼこしているのは、音を正確に聞き取るためだといわれています。音の正体は音波という空気の振動です。耳介で集められた音波は、外耳道を通り、その先にある「鼓膜」にぶつかると、今度は鼓膜を振動させます。振動は、鼓膜の先にある「耳小骨」というヒトの体のなかで最も小さい骨に伝わります。耳小骨の先には、渦巻き状の「蝸牛」があり、振動が伝わると、なかにあるリンパ液が振動し、蝸牛のなかにある有毛細胞をふるわせます。この有毛細胞はピアノの鍵盤のように音程順に並んでいて、感知した振動の内容を電気信号に変換します。それが神経を通って大脳に伝わり、音として認識されるのです。
耳が遠くなるのは、有毛細胞の衰えが原因
年を取っていくと、耳から入った音が脳に辿り着くまでの間に、さまざまな問題が発生するようになります。なかでも耳が遠くなる最大の原因は、蝸牛にある有毛細胞の衰えです。有毛細胞は蝸牛の入口に近いほど高い音、奥に行くほど低い音に反応するしくみになっていますが、どんな音も同じように入口から入ってくるので高い音を担当する細胞ほどダメージを受けやすくなります。そのためヒトは、年を重ねるごとに高い音から聞こえにくくなっていきます。
音波が聴覚に変わるしくみ
①音波が鼓膜に届き、鼓膜が振動する
②耳小骨が鼓膜の振動の力を増幅する
③ふるえが蝸牛のなかを巡り、電気信号に変わる
④電気信号が内耳神経を通って脳に伝わる
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解剖学は,医師や看護師、整体師、介護士、栄養士など医療・健康職や、トレーナー、ヨガ指導者など、スポーツ関係者が身に付けておくべき専門知識で、資格試験の科目です。いま、多くの人が勉強している解剖学のディープな面白さを、一般の人に向けて、ゆるくて楽しいイラストを使い、わかりやすく図解します
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 解剖学の話』
著:坂井 建雄
ヒトの骨は全部で何個あるの? 血管の長さって、どれくらいあるの? 女性と男性で呼吸法が違うって、ほんとう? いちばん身近でディープ! ヒトの体のナゾを徹底解明! 専門的知識ゼロでOK! 骨、筋肉、肺、心臓、腸、脳……。超素朴な疑問で楽しむ解剖学のキホン。いま、解剖学は医療職やスポーツ関係者だけでなく、健康や体に対する意識の高い人を中心に広く一般に関心が高まっています。解剖学は、人体を切り開き、ヒトの体のしくみと働きを追求する学問。そんな解剖学と解剖学から発展した生理学をベースに、いちばん身近でディープな人体の謎を、ゆるくて楽しいイラストとともにわかりやすく解説します。専門的知識ゼロでも大丈夫。素朴な疑問形式で、骨や筋肉、関節から、呼吸器、循環器、消化器、呼吸器、感覚器、生殖器まで、知っておきたい体のコトが楽しくわかります。日常生活にも役立ち、楽しさ満載の図解本。
公開日:2023.12.26