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月はなぜ地球の周りをまわっているのか?【地学の話】

原始惑星テイアが地球に衝突し、月が生まれた

太陽系の衛星の中で、地球の月は直径が5番目に大きい衛星です。母惑星の質量との比でみると地球の質量の約80分の1に相当します。ほかの衛星ではその比が1000分の1にも満たないので、月は母惑星に対して異常に大きい衛星です。

月の起源については、地球ができたときにほぼ同じ場所で同時にできた(姉妹説)、地球の一部が自転による遠心力で飛び出してできた(親子説)、地球と異なる軌道の天体を捕獲した(他人説)、地球に巨大な隕石が衝突したために月ができたジャイアント・インパクト(巨大衝突)説が主な候補として考えられ、可否が検討されてきました。

月の岩石の成分は地球のマントルの成分に近く、地球にあるような金属(主に鉄)の核はないか、小さいことがわかっています。そうすると姉妹説では説明できません。また、地球の自転による遠心力で地球をつくっている物質を重力に逆らって放出することも困難なので、親子説も否定的です。さらに他人説で月のような天体を捕獲できる確率が低いことから他人説も否定されました。

一方、約46億年前の初期の太陽系では、微惑星の衝突が繰り返され、この衝突による微惑星の合体で惑星は成長しました。形成中の地球では、岩石と金属の密度の違いから中心に金属の核、周囲に岩石のマントルと分化が進みます。この過程で原始惑星が衝突すると、主に外側のマントル部分が地球から引きはがされ、地球に再び落下しないで地球の周りをまわるようになり岩石中心の月が生まれる可能性があります。

計算シミュレーションは、直径が地球のほぼ半分の火星規模の原始惑星が地球に衝突すると月が生まれることを裏付けました。このジャイアント・インパクト説によると、月の岩石には「揮発性成分」が少なく、形成初期に表面付近が大規模に溶融した経験があることも説明できます。

現在、ジャイアント・インパクト説が最も有力な月創生のシナリオと考えられていて、地球に衝突したであろう原始惑星はテイアという名前で呼ばれています。テイアは自転軸に対して45度くらいの角度で斜めに衝突したという考えも提唱されました。この衝突によって地球の自転軸は公転面に垂直な方向から傾いてしまい、その結果、地球に四季が生まれることになった、というわけです。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』

【書誌情報】
『図解 地学の話』
著者:高橋正樹 他

地学は「地球を対象とする自然科学」の学問。ジャンルが幅広く興味深い話題も多い。地球の誕生から、火山や地震のメカニズム、異常気象や天気図、地層・化石まで、「地球物地学」「火山学」「気象学」「地質学」の4テーマに分けて解説。図解で楽しくわかりやすく勉強になる1冊。

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