アダムとエバが犯した人類最初にして最大の罪
アダムとエバのエデンの園での幸せな生活は、長くは続きませんでした。神によって造られた野の生き物の中でいちばん賢かった蛇(へび)が、こう言ってエバを誘惑したからです。
「(善悪の知識の木の実を食べても)決して死ぬことはない。
それを食べると、目が開け、神のように善悪を知るものとなることを神はご存じなのだ」
そう言われると、善悪の知識の木の実はいかにもおいしそうで、また賢くなれそうに見えました。そのため、エバは神の戒(いまし)めを破り、木の実を食べてしまいました。さらに、一緒にいたアダムにも勧めて食べさせたのです。
やがて神がエデンの園に戻ってくると、アダムとエバは神の顔を避けて木の中に身を隠しました。善悪の知識の木の実を食べたことで自分たちが裸であることを認識するようになり、恥ずかしくなったからです。神の戒めを破ったことへの罪の意識もあったのでしょう。
神は怒って蛇を呪(のろ)い、生涯地面をはって塵(ちり)を食べるものとする一方、エバに対しても「はらみの苦しみ」を与えました。妊娠・出産に苦痛が伴うのは、この時からとされます。
神はアダムに対しても「お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。(略)お前は顔に汗を流してパンを得る」と言って労働の苦しみを与え、そのうえで2人をエデンの園から追い出したのです。
これが人類最初の犯罪であり、人の神に対する最初の契約違反でした。
これ以降、アダムとエバの子孫である人間は生まれながらにしてこの罪を負っているとされ、ここから*原罪(げんざい)とも呼ばれます。
用語解説 *原罪 イエスはすべての人が負うこの罪を自らに引き受け、十字架にかけられることで、神と人との和解を成し遂げたとされる。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 聖書』
著者:渋谷伸博 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1960年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。宗教史研究家。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。著書多数。近著に『一生に一度は参拝したい全国の神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『歴史さんぽ東京の神社・お寺めぐり』(いずれもジー・ビー)、『あなたの知らない般若心経』(宮坂宥洪監修、洋泉社新書)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)などがある。
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公開日:2022.06.06