庇のつく位置で平入り系と妻入り系にわかれる
古来、日本の神々は八百万でした。山や石、樹木や滝など、神はあらゆる自然に宿ると考え、それ自体を御神体と見なしてきたのです。社殿ができたのは、仏教伝来後のこと。仏殿に対抗し、つくられるようになりました。
社殿のもっとも古い形式は伊勢神宮(大和朝廷が祭った天津神)と出雲大社(地方豪族が祭った国津神)の二つです。どちらの社殿も屋根は切妻ですが、拝む方向が異なります。三角形側(妻側)から拝むのが出雲大社で、この形式を大社造と呼びます。
これに対して伊勢神宮は平側から拝み、神明造と呼ばれます。全国各地の社殿は、この二つの神社形式を基本に、庇を付け加えることで生まれました。
たとえば大社造の妻側拝観部分に1枚の庇を付けると春日造(春日大社)、神明造の平側に庇を設けると流造(下鴨神社、上賀茂神社)になります。平側の両サイドに庇を付けたものが両流造(厳島神社)で、平側に1枚、妻側両サイドに1枚ずつ計3枚の庇を付けたものは日吉造(日吉大社)といいます。
なぜ庇を付けたのでしょう。それは社殿の内部は神様だけの専有空間だったからです。建物の外に庇を設け、そこから拝観するという形にしたのは、神と人間との関係を内部と外部ではっきり分ける工夫だったといえるでしょう。
日吉神社のように庇の数が多い社殿の場合、参拝者は本殿のなかに入ったような気持ちになるかもしれません。
しかし、そこはあくまでも庇の間という外部であり、本屋根下の内部ではありません。神社では、本屋根下(母屋)を内陣、庇の間を外陣と呼び、明確に区別しています。
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「うだつが上がらない」は建築からうまれた言葉?
本書、「図解 建築の話」では建築について様々な知識を提供していますが、ここではその中でも日常生活でもなじみのある「うがつが上がらない」という言葉について、ご紹介しましょう。
「うだつの上がらない人だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。うだつは漢字で「卯建」と書き、日本家屋に見られる設備です。うだつは防火設備だと解説されることがありますが、当初の目的は違いました。
中世から近世にかけての町家の屋根は、多くが板葺きでした。強い風にあおられると、めくれあがってしまいます。これを防ぐため、茅などを束ねて屋根を押さえたのが、うだつの始まりです。そもそも可燃性ですから、防火機能はほとんどなかったと考えられます。江戸時代に入ると、壁が漆喰塗りになり、屋根は瓦になって、町家の防火性は高まりました。しかし、軒裏部分は火が走りやすいので、袖壁を外に出し、漆喰で固め、延焼を防ぐ「袖うだつ」が登場します。
うだつが防火設備から意匠をこらしたものをにかわったわけ
このころ、うだつが防火設備になったのです。火事が多いのは冬ですから、袖うだつは冬に風が吹く側につければこと足ります。しかしそれではバランスが悪いので、厚みの違うものを両サイドにつけるようになりました。よく観察すると、風下側のうだつは薄く、風上側は火に耐えるよう厚く、つくられていることがわかります。
とはいえ、このようなうだつを設置するのにはそれなりの費用がかかります。そこから「うだつの上がっている家は成功している」というイメージが浸透し、「うだつが上がらない」という表現がうまれたようです。そのためか、現在も残っているうだつの多くは、本来の機能とは別にうだつの壁面には細かい装飾や小屋根に意匠を凝らしたものとなっています。
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只今紹介した「うだつ」という言葉の由来だけでなく、本書では建築の様々な知識を紹介しています。その数実に60個です!以下の5つのパートに分けて紹介をしているため、気になるパートから読むことが可能です。
「①日本の建築は知らないことだらけ」「②こんな目で見ると近・現代建築も面白い」「③寺社はこだわりの世界」「④城・庭が育んだ日本の美意識」「⑤建築を支えた縁の下の力持ち」の5章にわたって、日常生活において切手は切り離せない「建築」の奥深い世界を図解で分かりやすく解説します。
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出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク
【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
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公開日:2022.10.05