長期的な視野で支援する
『DSM −5』の診断基準によれば、発達障害の中分類は、知的能力障害群、コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害、限局性学習症/限局性学習障害、運動症群/運動障害群、他の神経発達症群/他の神経発達障害群の7つです。発達障害と言っても、その特性は人によってさまざまで、同じ疾患でも特性の現れ方には個人差があります。
たとえば、同じ自閉スペクトラム症の子どもでも、他人に興味を示さずに物静かでひとりを好む子どもがいれば、積極的に他人にかかわって一方的に話し続ける子どももいます。さらに、発達障害はそれぞれが複雑に重なり合っています。特に、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症の3つは併存しやすく、目立つ特性も複雑になっていきます。
このため、発達障害の子どもをケアする際は、症名に捉われず、本人をしっかりと観察し、どのような特性が現れているかをチェックすることが重要です。また、発達障害の支援は長期的な視野で行うことが理想です。なぜなら、発達障害の子どもは、理解力の偏りや記憶の仕方に特異性が見られ、定型発達の子どもよりも環境の影響を受けやすいからです。
学校にはさまざまな授業や行事があり、進級や進学によって入る教室、通う学校、クラスメイトの顔ぶれも変わります。次々と環境が変化するなか、どの環境のときに好ましい特性があらわれ、逆にどの環境で好ましくない特性があらわれたのか。そうした過去の生育環境が把握できていれば、支援する側も適切なサポートを提案しやすくなります。特性は人によってさまざまだと言いましたが、環境や加齢、本人自身の成長によっても変化するのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』監修/湯汲英史
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』
監修:湯汲英史
ADHDや学習障害、統合失調症やパニック障害などの言葉を耳にする機会はありますが、なんとなく心やメンタルの不調・病気と捉えてしまいがちな臨床心理学の分野。しかし紐解いていくと実はそれぞれの症状には特性や原因があり、子どもが抱えやすいのものから大人が抱えやすいものまで様々です。また、ストレスが原因で自分では気づかないうちに発症してしまうものも。本書ではそんな一見理解し難い「心の問題」の特性や症状を図解でわかりやすく解説します。最も大切なことはしっかりと特性を理解して自分と、そして他人と向き合うことです。「自分は他人がふつうにできることができない」「職場のあの人はどうも変に感じる」「子どもがじっとしていてくれない」こうした日常のもやっとした感情も、臨床心理学を知ることで理解が深まります。また、実際に現場で心の病気を抱えた人と向き合う公認心理士師の仕事についても紹介します。臨床心理学を通して「心の問題」について知ることで、自分や他人の特性がわかり、周囲と上手に付き合っていく方法を知ることができる一冊です。
公開日:2023.05.15