突然変異で生まれたバナナは、3倍体なので種子を作らない
バナナは熱帯アジアが原産地です。そこで育つバナナには、最初は実の中に種子がぎっしり詰まっていましたが、あるとき突然変異が起きて、種なしバナナができました。しかし、種子がありませんから種から増やすことはできません。そこでタケのように「株分け」して増やします。突然変異でできた種なしバナナは、どうして種子ができないのでしょうか。同じ生物のオス・メスが交尾すると、オスの精子とメスの卵子がくっついて受精卵となります。受精卵はオス親の染色体の半数とメス親の染色体の半数をもっています。たとえば、ヒトの染色体は46本ですから、受精卵は父親から23本、母親から23本、合計46本の染色体を受け継ぎます。子孫ができる生物の染色体は、すべて半分に分けることができます。その半数分を1セットとすると、たいていの生物は、2セットの染色体をもちます。これを「2倍体」といいます。突然変異が起きると、染色体の半数分が合計3セット、つまり「3倍体」になることがあります。受精の際に、これをちょうど半分に分けることは不可能です。種子のできないバナナは3倍体なのです。
ところで、4倍体の植物ができたらどうなるでしょうか。2倍体植物と突然変異の4倍体植物が交配すると、2倍体植物の卵子・精子(染色体1セットずつ)と4倍体植物の精子・卵子(染色体2セットずつ)とが融合し、1+2=3倍体となります。3倍体の植物は、成長には支障がないので、体は正常につくられ、外見はほかの2倍体の植物と同じです。ところが3倍体では、前述のように正常な種子ができません。これが種なしバナナやスイカのでき方だったのです。
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植物にも血液型があるってホント?
わたしたちの体を流れる血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンを調べると、分子が植物の葉緑素、クロロフィルとそっくりです。違うのは、真ん中にある元素がヘモグロビンは鉄、クロロフィルはマグネシウム、たったそれだけの差です。それなら植物には、人間と同じような血液型があるのでしょうか。じつは、血液型をもつ植物はけっこうあります。人間の血液中は血中の「糖たんぱく」の種類で決まります。1割くらいの植物は、人間と似た糖たんぱくをもっていることが知られています。植物の血液検査の結果、O型やAB型が多く、たとえばダイコンやキャベツはO型、ソバはAB型となるそうです。植物を切っても動物のように出血しませんが、動物と植物の基本的な生き方には似たところがあります。マメ科植物には、ヘモグロビンに似たクロロフィルのほかに、レグヘモグロビンがあります。名前からわかるように、レグヘモグロビンはヘモグロビンに似た働きをします。それは両者ともに酸素を運ぶ役割をしていることです。
では、レグヘモグロビンはいつ酸素を運ぶのか。まず、マメ科植物には根に丸い「根粒」とよばれるコブがたくさんあります。この中に「根粒菌」というバクテリアがいて、空気中から窒素をマメ科植物に供給します。代わりにマメ科植物は、根粒菌にすみかと栄養分提供しますから、マメ科植物と根粒菌は「共生」という互いに利益を得る関係です。しかし、根粒菌が窒素固定をするときにジレンマが生じます。根粒菌は窒素固定に必要なエネルギーを確保するために酸素呼吸をしますが、窒素固定に必要な酵素は、酸素があると活性を失うのです。そこで、マメ科植物はレグヘモグロビンを根粒菌に送って、素早く余分な酸素を運んで取り除きます。
★葉っぱの形が植物によって違うのはなぜ?
★なぜ春先に花粉症になるのか
★植物はどうやってあちこちに子孫を増やすの?
★光合成をしない植物も存在する?
などなど気になるタイトルが目白押し!
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執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
稲垣 栄洋
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公開日:2023.06.17