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細胞には二通りの死に方がある!細胞が傷つくと細胞死する【図解 病理学の話】

Text:志賀貢

アポトーシスとネクローシス

細胞にも寿命があり、死に方には「アポトーシス」と「ネクローシス」という2通りがあります。「アポトーシス」という細胞死は、語源的には枯れ葉などがぽろっと落ちるという意味で、管理、調節された細胞の死(自殺・自然死)をいいます。

ひっそり死んで、マクロファージによって貪食されていきます。人でいえば今流行やりの終活をきちんとして、細胞内の物質を使用可能な形に加工して放出してから死を迎えるのです。

例えば、人の手や足の発生です。将来、指として残る場所以外の細胞が死んで、最終的に手の形になっていきます。アポトーシスがない場合には奇形が発生します。もともと手の発生プログラムがそのようにできているので、「プログラムされた細胞死」とも呼ばれます。

「ネクローシス」は「壊死」と同じ意味で、何らかの刺激によって細胞が傷ついた結果おきる細胞死のことです。

例えば、臓器へ十分な血液が供給されないような状態(虚血)では酸素が供給されずに低酸素状態になって臓器の細胞が死んでいきます。酸素不足によって、ある臓器の細胞が、肉眼的にみてもわかるほど大量に「壊死」に陥ったのです。臓器レベルでこの現象を「梗塞」といいます。

ネクローシスした細胞は、終活する間もなく死んでしまいますので、中身を周りにぶちまけます。この結果、炎症が生じます。つまり、壊死が生じると、「炎症反応」が生じます。白血球が動員されるのはこうした状態です。

最後は、白血球や組織にあるマクロファージ)が壊死した細胞や細菌を貪食して消化してくれるのです。

ほとんどの臓器では、梗塞がおきてしばらくすると固くなってしまうので、形態学的には「凝固壊死」といわれ、壊死巣が軟らかくなり溶けていく場合を「融解壊死(液化壊死)」といいます。

ほとんどの臓器は凝固壊死をおこしますが、唯一、脳は梗塞が融解壊死を引きおこします。「脳軟化(脳梗塞)」といわれるのはそのためです。

死に方もずいぶん違いますが、もうひとつ大きな違いは、「壊死(ネクローシス)」は病的な状態でしか生じませんが、「アポトーシス」には病理的なものだけでなく生理的なものもあるということです。

細胞の寿命は骨細胞でおおよそ10年、筋肉細胞で6ヵ月〜12ヵ月、赤血球で3〜4ヵ月、皮膚細胞で20〜30日、消化器上皮細胞はなんと1日です。

アポトーシスとネクローシスの細胞死

アポトーシスは寿命を迎えた細胞死なので炎症はおこらないんだ!

アポトーシスとネクローシスの細胞死『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ

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気になる中身を少しだけご紹介!消化管のおもな病気と症状とは?

放っておくとがんになる炎症とポリープ

消化管とは、口腔から始まり食道、胃、小腸、大腸を経て肛門までの食物の通路のことをいいます。食道から胃までを上部消化管といい、食道にみられる病気で、近年増えているのが食道の粘膜が炎症をおこした「食道炎」です。その症状は、胸部の痛み、下障害(飲み込みにくい)、胸やけ、 香酸、などがあります。食道炎の中で多いのが「逆流性食道炎」で、これまでは高齢者に多くみられましたが、最近では若い人にも増えてきました。放置すると潰瘍に進行し、食道がんのリスクも高くなります。便秘が原因のひとつとされており、食生活にも注意が必要です。肝硬変患者の3大死因のひとつとなっているのが「食道静脈瘤」です(そのほかは肝がん、肝不全)。食道粘膜の下層にある静脈が太くなり瘤のようになった状態です。これは「門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)」が原因となって発症します。「門脈」とは、腸で吸収された栄養素を肝臓に送り込む血管のことで、門脈を通して取り込んだ栄養は肝臓で処理されて全身に運ばれます。

しかし、肝硬変になると血液が流れにくくなり、それまで門脈を流れていた血液は、本来のルートからはずれて食道の血管を流れるようになります。食道への血流が多くなる結果、血管が船のようにふくれあがって食道静脈瘤になります。手当が遅れると瘤が破れ大出血してショック死をすることもある怖い病気です。胃の粘膜の炎症でおきる「胃炎」は、急性胃炎と慢性胃炎に分けられ、急性胃炎は喫煙、暴飲暴食、アルコール飲酒、ストレスが原因のものと、感染性(ブドウ球菌、アニサキス)があります。慢性胃炎はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、や加齢などの複数の因子が絡み合っているとされます。胃の粘膜にポリープができる「胃ポリープ」には、放置しても問題のない「胃底腺ポリープ」、比較的ピロリ菌が下人でなることが多い「過形成性ポリープ」、正常組織よりがんを発症しやすい前がん病変と考えられている「胃腺腫ポリープ」などがあります。

消化官のおもな病気

口腔

歯周病・口の中の腫瘍・嚥下障害など

食道

食道炎・食道静脈瘤など

胃炎・胃ポリープなど

十二指腸

十二指腸潰瘍・十二指腸炎

小腸

クローン病・小腸腫瘍など

大腸

大腸ポリープ・潰瘍性大腸炎など

肛門

痔核疾患・痔ろう

消化管のおもな病気『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

★生命の設計図といわれるDNA
★細胞には2通りの死に方がある!?
★貧血はどうして起きるの?
★がんって本当に遺伝するの?

などなど気になるタイトルが目白押し!

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「病理学」について切りこんだした一冊。病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」です。コロナウイルスが蔓延する中で、人はどのようにして病気になるのかが、改めて注目されています。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊です。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』
著:志賀 貢

病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊。細胞、血液、がんーー生命の不思議と病気の原因を、面白くわかりやすく探る!

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