いろいろな説があるが「腹膜のこすれ説」が有力
急に走り出したり、食後すぐに運動をするとお腹が突然痛くなって困ったことはありませんか。この痛みは英語で「スティッチ(Stitch)」と表現され、縫いもののひと針を意味します。
その原因にはいろいろな説がありますが、「脾臓の収縮」もそのひとつといわれています。脾臓は免疫や造血、血液の貯蔵を担になっています。激しい運動をすると筋肉がたくさんの酸素を必要とするために全体の血液量が足りなくなります。
その際、中にためられていた血液を送り出すために脾臓が急激に収縮し、左脇腹に痛みを感じるというものです。
また、食後に激しい運動をすると、血液が足りなくなり胃や腸がけいれんを起こすことがありますが、このけいれんが痛みとして脳に伝わり、脇腹が痛いと勘違いする「胃や腸のけいれん」説、あるいは、横隔膜とまわりの筋肉や内臓への血流と酸素の供給不足による「横隔膜のけいれん」説、消化の際に食べものと消化液の化学反応で発生したガスが、運動による体の揺れによって大腸に集まって膨らみ、そのために痛むという「ガス」説など痛む部位によっていろいろな原因が考えられています。
最近では、腹部の内側にある腹腔が運動によって上下左右に揺すぶられ、中の臓器が動いて腹膜が刺激され、腹膜がこすれて痛みが生じる「腹膜」説が有力となっています。
いずれの場合も予防として、食後すぐには運動をせず、十分な時間をとってから体を動かすようにしましょう。
運動をするときは、必ずストレッチなどの準備運動をおこない、はじめは軽い運動から始めます。とくに、ランニングやスイミング、ダンスなど、上半身に揺れによる負担がかかるスポーツでは、体幹を鍛えることが予防になります。
出典:『図解 人体の不思議』監修/荻野剛志
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脳は重くてシワの数が多いほど頭がいいのか?
生物の体には不思議なポイントが沢山あります。そして特に最も神秘的なカラダの部位と言えば人間の脳です。まずは、人体の脳における不思議について解説しましょう。
動物と脳の関係を比較すると、一般に小動物ほど体重の割に脳が重く、逆に大型動物ほど軽いことがわかります。動物の脳と体重の間には、「脳の重量は体重の0.75乗に比例する」という規則性があり、これを「スケーリング」といいます。ただし、この動物界の普遍的な規則にあてはまらない動物がいます。それがヒトです。ヒトは、動物の中では例外的に大きな脳を持っているのです。
また、ヒトの場合、アインシュタインの脳が1230グラムと一般的な成人男性の脳(1350〜1500グラム)よりも小さかったことから、脳の大きさと頭のよさは関係ない、ともいわれます。しかし、カリフォルニア大学の「脳の大きさと知能指数(IQ)の関係」の研究では、わずかながら脳の大きな人ほどIQが高く、とくに「大脳皮質」の「前頭前野」と「後側頭葉」の皮質が厚い人のIQが高いという結果が発表されました。
天才は生まれつきではない、幼少期がポイント
ところが、さらに研究を進めると、皮質が厚くてもIQが高くない人がいることもわかりました。このことから「IQの高さは皮質の厚さより、脳が幼少期にどれだけ成長したかが重要」といわれてきました。この説を裏づけるように、IQが120以上の人の脳は、7〜9歳頃の幼少期にはむしろ平均よりも皮質が薄く、その後13歳まで肥大化し、厚みを増し続けていたとされ、幼少期の教育熱は高まりそうです。
しかし、一方でIQはあらゆる知能を網羅した数値ではなく、万能性がないことも把握する必要がありそうです。昔からよく「脳みそのシワが多いほど頭がいい」といわれます。しかし、脳のシワは胎児のときに大脳が形成される過程でつくられ、生まれたときにはすでにできあがっているため、成長してどんなに勉強してもシワの数は増えないそうです。
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【書誌情報】
『図解 人体の不思議』
監修:荻野剛志
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公開日:2023.10.17