アメリカが世界トップの経済大国なのは地理的に最強だから【図解 地理と経済の話】
農業も貿易もしやすい国土
アメリカは「世界の食料庫」と称されるほどの一大農業国。それを支えているのが西経100度線の西側に広がる大平原「グレートプレーンズ」と、その東部からミシシッピ川の西へと広がる大草原「プレーリー」です。内陸のこのあたり(特にプレーリー)は、農業に適した肥沃(ひよく)な黒土が広がる穀倉地帯。麦やトウモロコシ、大豆などが生産され、牧畜も盛んに行われています。また、温暖な南東部では綿花栽培が、かつて氷河だった北東部では酪農が行われています。
北アメリカ大陸は、鉄鉱石・石炭・石灰石といった天然資源の宝庫でもあります。カナダとの国境付近にある五大湖周辺は特に資源に恵まれており、鉄鋼業を中心とした東部工業地帯がここから発展していきました。その助けとなったのが水運です。五大湖を起点とし、大西洋に注ぐ運河が造られると同時に、ミシシッピ水系と結んで国内の至るところへ水路が引かれました。この水運の発達が、国土の大部分が山地のメキシコ、寒冷地が多く冬季に河川が氷結するカナダに対する流通上の大きなアドバンテージとなったのです。
このようにアメリカは、農業に適した土地があり、国土の気候がさまざまであること、そして資源を届ける運河という地理的な好条件で経済大国となったのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
著者:井田仁康
著者プロフィール
井田仁康:筑波大学名誉教授。博士(理学)。1958 年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任し、日本地理学会理事。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。著書や編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『世界の今がわかる「地理」の本』(三笠書房)などがある
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昨今、地理的条件から政治を分析する「地政学」が注目を集めています。国土の形や立地、隣国との位置関係や気候などから、政治的・軍事的な影響を研究する学問で、世界情勢を紐解くうえで欠かせない考え方といえます。実は、地理は政治だけでなく、経済にも大きく関わっています。一見繋がりが見えにくい地理と経済の話ですが、
・インドでIT産業が特に発展したのはなぜ?・天然資源に恵まれたアフリカがなかなか成長できなかったのはなぜ?・中国やインドに続いて今後さらに伸びていく国はどこ?・中東で大量の石油が採れるのはなぜ? これらはすべて「地理」で説明ができます。今の世界情勢からこの先世界がどう動いていくかまで、世の中の流れがわかるようになる「経済地理学」が面白く学べる一冊です!
公開日:2024.10.02