なぜネットで誹謗中傷をしてしまうのか
匿名であればゲスになれる
ネット上の誹ひ謗ぼう中傷は、今や深刻な社会問題です。それによって命を絶つ人も増えており、人々に与える影響も大きくなっています。ネット上のことなのだから気にしなければいい。そんなふうに思えるのは、自分に火の粉がふりかかっていないからです。自分がそんな目にあったら、どんなにストレスや恐怖を感じることか。
嫌いな相手に面と向かって「お前なんか嫌いだ」と言う人がいるでしょうか? 少なくとも会社や大人の集団の中では、そういうことはほぼないと思います。なぜなら、そんなことをすれば自分と相手だけでなく、その周囲の人間関係までおかしくなるし、だいたい、それを伝えたからといって意味がありません。
それなのに、ネット上になると、特定の人に対して罵ば詈り雑言をぶつけたり、脅迫的なメッセージを送ったりする。そこではネットの匿名性が大きな要因になっています。アメリカの心理学者、ジンバルドの実験によると、没個性化、つまり匿名の状況下において、人は冷酷になりやすく、相手をくり返し攻撃することで、さらに冷酷さを増していくという結果が出ています。もしもネット上のメッセージのすべてが、メッセージの内容と同じく、誰が書いたのかまで確実に世界中にさらされてしまうとしたら、直接関係ない相手に悪意のあるメッセージを送る人はいないでしょう。自分も痛みを伴うからです。
ネット上で嫌なことをされれば辛いということを意識したうえで、自分は安全だからこそ、実際にはできないような卑劣な行動をしているのです。
また、数の論理も作用します。大勢が一斉に攻撃することにより、自分の影響力は大多数の中の一人として小さく感じられ、罪の意識が生まれにくいのです。
没個性化で人はネット上で普段できないことをする
なぜネットでは人は凶暴になるのか
人は集団の中に入り自分の個性がなくなり、自分の匿名性や安全性が守られると、急に凶暴化して攻撃的になる。対面なら相手の表情が見えて、攻撃性も弱まるが、ネット上ならそれがないので、より攻撃が悪化する。
SNSで著名人とつながっていると、リアルな知り合いではないのに、身近な人と勘違いしてしまう。そのため、その著名人が意に反したことをすると、裏切られたと苛立って誹謗中傷をしてしまう。「かわいさ余って憎さ百倍」である。
【出典】『相手の心が9割わかる 大人のブラック心理学』著:渋谷昌三
【書誌情報】
『相手の心が9割わかる 大人のブラック心理学』
著:渋谷昌三
相手の心が手に取るようにわかる!思い通りに人を動かすちょっぴりダークな心理学を専門家が徹底解説!
いつの時代も悩みの尽きない“人の心”の問題。
「なんであの人は自分に攻撃的なんだろう……」「実際あの人は私をどう思っているんだろう……」など、仕事、家族、恋愛などで人の心に悩まされている人も多いはず。また、コロナの影響で他人との対話の機会が減った一方、家族とは必要以上の距離感になり、ストレスを抱えてしまう、なんてことも。
本書では、すべてに使える相手の心を見破る心理テクニックに加え、ZoomやSNSなど多様化したオンライン技術が普及した世の中でも使える心理学によるコミュニケーション法を心理学の専門家が徹底解説!
オンライン会議で成功するコツ、SNSに隠された相手の本性、諦めきれない恋で使える心理テクニック、夫が自宅にいる世界でストレスを溜めない方法など、今だからこそ起こり得る状況とそのストレスを解消できつつ、自分の思い通りに事が進むようになる悪用厳禁な心理学をこっそりご紹介します。
公開日:2024.12.14