半導体トランジスタが変えた世界の景色?
電気的な特性を表す言葉に「絶縁体」や「導体」があります。冷静に考えるとすごく意地悪な名前の「絶縁体」は電気をまったく通さないもので、逆に「導体」は電気をツーツーに通します。雷の日に導体である金属のゴルフクラブを振り上げると、雷が落ちやすいのもこの性質が元になっています(ゼッタイにやらないで!)。
絶縁体と導体の真ん中と考えていい物質が、「半・導体」です。文字通り半分だけ導体の性質を持っています。半導体は気まぐれで、電気を通すときと通さないときがありますが、その性質の詳細がわかったのは量子力学のおかげです。量子力学を使うことで半導体がどんな条件になると電気が流れたり流れなかったりするのかがわかるようになり、電気の流れをコントロールできるようになったのです。
その半導体が世界を変えました。1947年に発表されたトランジスタの開発です。トランジスタとは電気のスイッチです。そう聞くと「うちの壁にも電気のスイッチはある」と思うかも。その通りです。半導体はわたしたちが使うふつうの電気のスイッチと一緒です。違いは指で押すスイッチか、電気で押すスイッチか、です。
わたしたちは算盤(そろばん)を指で押して計算します。電卓はそれを電気で行います。電気がトランジスタのスイッチを押す、そのスイッチから流れた電気が次のスイッチを押す、という仕組みでたくさんの電気スイッチが組み込まれた複雑な算盤が電卓です。わたしたちが使うコンピュータはスーパー
電気算盤です。中には信じられない数のトランジスタが詰まっていて、つぎつぎと電気スイッチの配列を押していくことで計算しています。
現在使われているコンピュータチップには1000億個以上のトランジスタが詰まっています。この大量の電気スイッチがつぎつぎに押されることで電子メールを送ったり、動画をインターネット経由で見たりと、さまざまなことができるようになったのです。
絶縁体・導体・半導体の特徴
計算機には電気スイッチがいっぱい
脳とチップの戦い
ちなみに人間の脳の中のニューロン(脳のスイッチ)は900億個といわれているんだね。最新のコンピュータチップのトランジスタ数(電気スイッチ)は1000億個以上も入っているから、いまや人間の脳のスイッチ数を追い抜いちゃった。人間とコンピュータのどちらが賢いか、ここからが正念場だよ。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』著:久富隆佑、やまざき れきしゅう
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』
著:久富隆佑、やまざき れきしゅう
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公開日:2025.01.20