エンジンをパワー全開で動かし続けると起きる危険な“現象”とは【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】

エンジンのパワー全開で、何が問題か

エンジンにダメージを与えるコンプレッサー・ストール

自動車のピストン・エンジンは吸入、圧縮、燃焼、排気といった仕事をいつも同じシリンダ内で行なっています。しかしジェット・エンジンは、それぞれの専門の仕事を流れ作業のように行なっています。

そのために、タービンの羽根のように、常に高温に耐えながら高速回転しなければならない、過酷な場所が存在してしまいます。

その過酷な場所で熱応力や運動応力に負けて壊れしまったタービンの破片が、下流に飛散してしまったら、高速回転しているエンジンは悲惨な結果になってしまいます。またタービンが破損しないまでも、エンジンの寿命や整備費などにも大きな影響を与えてしまいます。

そためタービン入り口の温度は、制限値が厳しく設定されていて、どのような状況にあっても制限値を超えないように、燃料の量をエンジンに送る必要があります。

また、こうした燃焼温度の問題をクリアしたとしても、次の問題があります。例えば急にレバーを操作し燃料の量を増やしたとします。するとタービンを通過するガスの量は増えます。しかし、タービンと圧縮機は、力を加えない限り動こうとしない性質である慣性のため、急には動きません。

圧縮機がもたもたしていると、下流に向かう空気の流れが不安定になり、「ドーン」といった大音響と振動をともなうコンプレッサー・ストールと呼ばれる現象を引き起こしてしまいます。

コンプレッサー・ストールが発生すると、エンジンに大きなダメージを与える可能性があるため、スラスト・レバーを急激に操作しても、安定した運転が可能な燃料制御が必要となります。

エンジンの制限

外気温度が高くなると、タービン入口温度が高くなっていきます。そして、タービン入口温度の制限値を超えるよう外気温度になった場合には燃料流量を減らさなければなりません。このよう外気温度よって制限される推力のことをフル・レイティングと呼んでいます。ただし外気温度が低ければ低いほど推力を大きくできるわけでもありません。今度はエンジン内部の圧力が高くなりすぎるので強度上の問題が発生します。そのためエンジンが吸い込む外気圧が高い時には推力を小さくしなければなりませんが、このように外気圧で制限される推力のことをフラット・レイティングと呼んでいます。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治

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