権威の象徴から「心の整理」の場へ。時代とともに変化した日本人の弔いと墓の役割【眠れなくなるほど面白い 図解 死の話】

墓の役割とは?

「祈る場所」が人の記憶をつなぎとめる

 人は死者を弔うために墓をつくってきました。墓は単に遺体や遺骨を納めるための場所ではなく、生きている者が死者を思い出し、つながりを確認するための“記憶の装置”でもあります。墓を訪れる行為そのものが、死を受け入れ、心を整理する役割を担ってきました

 日本では、古墳時代に墓の文化が急速に発展し、相次いでつくられた巨大な前方後円墳は古代の支配者の権力を象徴する存在となりました。奈良時代以降、仏教が浸透すると、仏教は死者の供養を担うようになっていきます。中世から近世にかけては庶民には墓は普及せず、仏壇で先祖を祀ることが供養の中心とされました。火葬が広まった結果、今のような遺骨を納める墓が普及し、家の継続を示す役割も果たしました。

 現代では、家族形態の多様化や少子高齢化に伴い、従来型の墓を維持できない家が増えています。こうした状況のなかで、永代供養墓、樹木葬、納骨堂、散骨など、新たな供養の形が広がりはじめました。形式は変わりつつあっても、死者を思い、記憶をつなぐという根本的な役割は失われていません

 墓の前に立つことで、人は「生きること」と「死ぬこと」のつながりを確かめてきました。それは、時代が移っても変わらないのです。

古墳時代の墓は権威の象徴だった

大山古墳

日本最大の前方後円墳で、全長は約486mもある

【労働者】

ピーク時には古墳づくりに約2000人が動員され、15年8カ月という歳月をかけてつくられた

【埋葬された権力者】

大山古墳は仁徳天皇の墓という説もあるが、定かではない。とはいえ、その規模からは相当の権力者であったと考えられる

古墳は、支配者の権威を示す象徴であり、住人を総動員して築かれた巨大なプロジェクトだった。死者を祀る営みは、同時に政治と社会の秩序を形づくるしくみでもあった。

現代における墓の役割

供養

個人の冥福を祈る

心の整理

死を受け止める

家族の記憶

亡くなった家族のことを思い出す

現代の墓は、かつてのような権力の象徴ではなく、生きている人が故人を思い返し、心を整えるための場所である。家族の記憶をつなぎ、死と向き合う場であるといえる。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 死の話』監修:島田裕巳

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