世界遺産の始まりは「水没危機」だった!世界で最初に登録された12件を紹介【眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産】

エジプトの神殿救済が世界遺産の原点だった!

世界遺産の理念は、神殿群を水没から救う、ある国際プロジェクトから誕生しました。1952年、エジプト政府はナイル川の洪水を防ぎ、経済の基盤を整えるために巨大ダムの建設を決定します。しかし、ダムが完成すれば、古代エジプト文明を代表する「アブ・シンベル神殿」や「フィラエのイシス神殿」などの貴重な遺跡群がダム湖に沈んでしまいます。

そこでエジプトとスーダンの両政府は、開発による利益と文化財の保全を両立させるべく、ユネスコに支援を要請しました。ユネスコは正式名称を国際連合教育科学文化機関といい、国際平和と安全、人類の福祉の促進を目指す国連の専門機関です。

しかし、ユネスコには文化財保護のための十分な予算がありませんでした。そこでユネスコは1960年から各国に協力を呼びかけ、募金と技術支援を柱とする遺跡救済キャンペーンを展開しました。

その結果、約50カ国に加え、企業や団体からも資金・技術協力が集まり、一部の神殿は部材ごとに切り分けられて高台へ移設されました。この救出作戦は、文化財保護を「一国の問題」としてではなく、「人類共通の宝物」として、国境を越えて守れることを国際社会に示しました。

これを契機に、文化遺産や自然遺産を当たり体的に救うのではなく、国際的な枠組みによって持続的に守ることの重要性が強く認識されるようになりました。

こうして1972年、ユネスコ総会で「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」が採択され、1975年の発効以降、世界遺産リストと保護の仕組みが本格的に動き始めたのです。

ユネスコが目指すのは平和な世界

戦争は人の心の中で生まれるものだから、人の心の中にこそ平和のとりでを築かなければならない。
(ユネスコ憲章・前文より)

国境を越えて文化財や自然を守ることは、単なる保全活動ではなく、平和で安全な世界を支える取り組みでもあります。各国が協力し、国際的な保護の枠組みを動かし続けることが、衝突や戦争を防ぐための関係構築につながるのです。


世界遺産条約の締約国
196カ国
(日本は1992年に批准)

日本では自然と文化を一体で捉える考えが根付いていたが近代以降のヨーロッパ中心の世界では別々に扱われてきた。ゆえにひとつのルールで守る世界遺産条約は画期的なのだ

世界で最初に登録された世界遺産12件

(1)ガラパゴス諸島(エクアドル)
(2)イエローストーン国立公園(アメリカ)
(3)シミエン国立公園(エチオピア)
(4)ナハニ国立公園(カナダ)
(5)キトの市街(エクアドル)
(6)アーヘンの大聖堂(西ドイツ:当時)
(7)ラリベラの岩の聖堂群(エチオピア)
(8)ランス・オー・メドー国立歴史公園(カナダ)
(9)メサ・ヴェルデ国立公園(アメリカ)
(10) クラクラの歴史地区(ポーランド)
(11)ヴィエリチカとボフニャの王立岩塩坑(ポーランド)
(12)ゴレ島(セネガル)

\知名度より守るべき「人類の宝物」かどうか!/

    【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』監修:宮澤 光

    【監修者紹介】
    宮澤 光(みやざわ・ひかる)
    NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。跡見学園女子大学非常勤講師。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。

    【書誌情報】
    『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』
    監修:宮澤 光


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