【臨床発達心理士が解説】「困った行動」は脳の特性?ASD・ADHD・LD/SLD・境界知能の認知の偏りと正しい支援法【発達が気になる子の認知遊び】

発達特性ごとに見られやすい認知の偏りと支援の視点

 発達が気になる子どもたちの行動は、発達特性ごとに異なる認知の偏りとして表れやすい傾向があります。これは「できない」「困った行動」ではなく、情報の受け取り方や処理の仕方の違いによるものです。

 ここでは、代表的な発達特性ごとに見られやすい認知の特徴と、その特性を踏まえた支援の視点を整理します。


ASD(自閉スペクトラム症)

ASDの子どもは、社会的認知やメタ認知の領域に課題が現れやすく、相手の気持ちや意図を読み取ること、文脈から状況を推測することが難しい傾向があります。また、知覚の過敏さや鈍麻を伴うことも多く、音・光・触感などの刺激に対して過度に反応する場合があります。これらの特徴から、集団のなかでの行動理解が難しく、結果的に「こだわりが強い」「マイペース」と誤解されやすいのです。

支援の視点

「見通しをもたせる」「言葉より視覚的に伝える」「環境の刺激を調整する」ことが効果的です。予定や活動手順を絵や写真で提示すると安心感が高まり、次の行動に移りやすくなります。また、得意な知覚処理を活かした構造化された環境は、混乱を防ぎ、自立的な行動を促します。


ADHD(注意欠如・多動症)

ADHDの子どもは、注意処理と実行機能に関する脳の働き方に特徴があります。多くの刺激のなかから必要な情報を選んで集中することが難しく、結果的に「気が散りやすい」「忘れっぽい」などと見られやすくなります。しかし、実際には「注意を向けたいのに持続できない」という脳の制御の難しさによることもあります。

支援の視点

環境の整理が重要です。視覚的刺激や音を減らすことで集中しやすくなります。また、行動の流れを具体的に提示すると、実行機能を補う支援になります。さらに、成功体験を細かく認めることで、報酬系を活性化し、「できた」という快感が次の行動意欲につながります。


LD/SLD(学習障害 / 限局性学習症)

LDの子どもは、知覚・記憶・言語思考の一部に特定の弱さが現れやすいといえます。たとえば、文字の形を正確に認識する視覚的処理が苦手な子、音と文字を結びつける音韻処理が難しい子など。一方で、理解力や思考力自体は十分に備わっていることが多く、「努力していない」と誤解されてしまいます。

支援の視点

苦手な処理経路にこだわらず、代替手段を活用することが大切です。音声教材、ICT、図解などを使うことで、「理解はできる」という自信を取り戻せます。また、「どんな方法ならうまくいくか」を一緒に探す関わりが、メタ認知の育ちを促します。


境界知能

境界知能の子どもは、7つの領域すべての基礎が少しずつ弱く、情報の処理速度がゆっくりな傾向があります。新しい情報の理解に時間がかかるため、くり返しや具体的な経験を通じて学ぶことが重要です。

支援の視点

スモールステップで成功体験を積むこと、理解を「言語」と「体験」の両面から支えることが大切です。「できるまで待つ」「わかったふりをさせない」姿勢が、安心と自信を生みます。

【出典】『発達が気になる子の認知遊び』著:藤原里美

【著者情報】
藤原里美(ふじわら・さとみ)
一般社団法人チャイルドフッド・ラボ 代表理事/臨床発達心理士/保育士
公立保育園・東京都立梅ヶ丘病院・東京都立小児総合医療センター・明星大学非常勤講師を経て現職。
発達障害のある子どもの療育、家族支援を行うとともに、園の巡回や発達支援の研修など、支援者育成にも力を注ぐ。「子どもを変えずに、子どもの周りの世界を変える」支援方法により、現場や家庭で実現可能な実践方法を発信している。

【書誌情報】
『発達が気になる子の認知遊び』
著:藤原里美


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楽しい遊びを通して、子ども自身が困っていることの解決をめざす大人気シリーズ。

認知発達とは、見る・聞く・記憶する・覚える・考える・予測するなど、情報をキャッチし、物事を理解して考える力が育っていく過程を指します。

わたしたちは日常のなかで多くの情報を受け取り、その情報をあたまのなかで「整理して」、「次にどうするかを判断」しています。
認知発達はこの一連の過程を支える基盤であり、学習だけでなく、生活全般や人との関わり方に深く関係しています。

・遊びが続きにくい
・集団遊びに入りづらい
・指示が入りにくい
・切り替えが難しい
・ルールのある遊びが苦手 など発達が気になる子にとって、
認知発達を育む遊びは特に重要です。

本書で紹介する150個の「認知発達遊び」は、日常のなかで遊び、関わりながら、
その子のペースで認知の土台を育てていくためものです。
認知発達をつぎの7つの領域に分けて解説し、それぞれの領域を育てる具体的な遊びの提案をしています。
1知覚
2注意・処理
3記憶
4言語思考
5実行機能
6社会的認知
7メタ認知

診断の有無にかかわらず支援したいとき、「教える」より「育てる」関わりを大切にしたい場面などで、
それぞれの発達段階にあわせながら、無理なく取り入れられる遊びを紹介します。

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