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スポーツ指導の現場で見受けられる選手を困惑させる、言葉の曖昧さとは!?【廣戸聡一ブレインノート】

Text:廣戸聡一

常に狙い続ける

●脳はいつでもターゲットを意識している
たとえばサッカーでボールを蹴るために「狙う」と考えたときは、ボールに対しての抵抗や重力はかかっていませんが、実際に蹴ったあとのボールには、必ず空気抵抗と重力が伴います。ですから、狙うときにはそういった外力も計算し、蹴り出す角度を身体で変えていく必要があります。しかも、それを瞬時に行うのが難しいところで、サッカーの場合は、「ゴールのどこを狙うのか」「ディフェンダーとボールの位置を踏まえると、どこが一番空きやすいのか」などを、常に狙って、計算しながら走っているのです。

つまり、ターゲットはひとつではなく、狙い続けているということです。的に矢を射るという明確なターゲットを持つ弓道でも、実際は射場に入ったところから、常に的を狙い続けています。弓道が所作を慮るのはそのためで、脳はいつでも的を意識しているということです。また、ゴルフも同様です。止まったボールにバックサイドから向かい、次のボールの動線に入っていかなければ、次のターゲットが決めにくくなります。アドレス(セットアップ)に入ってから狙うのではなく、ボールまで移動するときも狙い続けているということです。

●選手を困惑させる、言葉の曖昧さ
スポーツ指導の現場では、指導者の言葉が独り歩きして選手が困惑する、という場面に多々遭遇します。たとえば「意識して動かせ」という言葉。これはもはや指導者の常套句ですが、指導者側からすると「教えた通りにできないのは、意識していないから」という責任回避の逃げ道にもなり得る言葉です。

また、「身体を回転させる」や「背筋をピンとする」といった言葉も同様で、いずれも「身体を回転させているように見える」「背筋をピンとしているように見える」だけで、実際はそうなっていないという間違った表現です。狙うことも同様に、「狙うときは、しっかりと見て狙いなさい」などと言う指導者がいます。しかし、狙うということはただ見るだけの行為ではありません。具体的に「選手の身体がどのように動き、どのような動作で準備がなされたのか」をきちんとした言葉で説明をしなければ抽象的すぎて、選手は戸惑うだけです。

【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一

「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!

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