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日本のスポーツの「チーム作り」に欠けているものとは!?【廣戸聡一ブレインノート】

Text:廣戸聡一

日本の「チーム作り」に欠けているものとは

●どんなチームにしたいのか?
日本のチームのあり方で一番問題なのは、「組織としてどうなってほしいか?」が語られていないことです。強いチームにしたいのか、競技を楽しませるひとつの道具にしたいのか、チームの指針がはっきりしないことが多いのが現状です。以前、なかなか勝てずにいた団体競技の女子代表チームを指導したとき、監督が選手にどのようなチームにしたいかを伝え、選手の責任の所在をはっきりさせると、チームは一変しました。選手が譲り合っていた場面で、どちらにも責任があると自覚したことで、動きがスムーズになったのです。日本人は意見や立場の対立を嫌いますが、ドラスティックな変革には勇気が必要です。この場合、監督の覚悟がチームを変えたのです。

●勝つための工夫を楽しむ
チームプレーで戦う集団競技の場合、ルール上許される範囲でアジャストする新しい戦い方にいち早く気づいたチームが、優位な成績を残します。ゲームメイキングとルールは密接しているため、「ルール上セーフだけれど、どちらかというと反則に近い」となると、ルール改正が行われることもあります。しかし、そこを突くなど、勝つための工夫は非常に楽しいものです。たとえば1960年代にプロ野球の読売ジャイアンツは、いち早くアメリカ・メジャーリーグのベースボールの戦法、いわゆる「ドジャース戦法」を取り入れたことで、その後、9連覇という偉業を成し遂げました。

そしてそのときの主要メンバーは、その後10年間、若手に抜かれることなく、ほぼ不動のポジションを得たのです。このように、いち早く新しいものに取り組むことが、その世界を牽引することにもなるのです。また、選手個人の視点から見ると「自分の成長」も楽しみのひとつです。「人と自分を比べるのではなく、昨日の自分と今日の自分を比べる」という目標を設定させることで、日々その変化を楽しむように導くことができます。ただし、競技をする以上、「結果を出す」ことが重要なのは言うまでもありません。勝つことを真摯に捉えて真剣に取り組むことで、悔しさや辛さがあって、初めて楽しさが生まれるのです。

●選手に「感じさせる」「考えさせる」指導
監督は1から10までを選手にわかるように指示する必要はありません。チームには縦の命令と横並列の共有命令があり、監督の全体的な指示の先は、選手それぞれがお互いに何をすべきか決めて行動していくのです。もちろん、すべての選手が同じ能力を持っているわけではないため、お互いを尊重し、誰がどんな役割を果たすかをあらかじめ決めておく必要はあります。その上で選手自身が考えて行動することで全体命令が達成しやすくなるのです。

また、チーム内の馴れ合いを排除するためには、選手に「感じさせる」「考えさせる」やり方をとるべきだと思います。選手は監督の意図を考え、何をすべきか思いを巡らせる。監督が選手に手取り足取り教えるというやり方は完全に予定調和的な展開で、「選手は誰も焦っていない」という状況になります。本来、「選手は緊張しているべき」なのです。結末を知っているドラマは面白くありませんから、指導者は「この先どうなるんだろう」と思わせながら、流れを作っていく必要があります。

【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一

「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!

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