頭を再生したプラナリアになぜ記憶があるの?【生物の話】

~脳以外の記憶装置~
プラナリアという生物がいます。日本でもその一種ナミウズムシなどが河川に生息しています。プラナリアは進化の面からは前口動物と後口動物の分岐点に位置し、脳を持つ動物としてはもっとも原始的な構造をしています。その大きな特徴と言えば、驚異的な再生能力にあります。たとえば、ある個体を胴部分から真っ二つに切ると、頭部からは胴体以降が、腹部からは頭部が再生されます。二つだけでなく、三つ、四つ……切った数だけ個体は再生されます。
タフツ大学のタル・ショムラットらは、プラナリアの再生能力の高さに着目し、ある実験に及びました。本来プラナリアが好まない環境下で餌付けし、その後、切断。尾部から再生させた個体に、餌付けの記憶が残っているか調べたのです。実験結果は、餌付けのトレーニングをしていない個体との比較から得ました。
当初、餌に到達するまでの時間に、トレーニングをしていない個体と、再生した個体間では差が出なかったそうです。しかし、再度餌に到達するまでのプロセスを学習させたところ、その習得には明確な差が生じました。
それは、かつて学んだことを思い出したことを意味します。尾部から再生した個体は「新しく再生された脳」が機能している……その事実が意味するところは、記憶は脳以外にもあるのではないかとの期待です。
残念ながらその仮説は、現段階では証明にまでは至っていません。しかし、もし脳以外の記憶装置があるとしたら、アルツハイマー病や認知症など、記憶に関係する病気の有効な解決策になるかもしれません。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。

「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!
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