世界で年間最大35件まで!世界遺産新規登録の審査数に「厳しい上限」が設けられているワケ【眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産】

増え続ける世界遺産… 守り続ける力は足りる?

 年に一度開催される世界遺産委員会では、毎年新たな世界遺産が誕生します。年々増え続ける世界遺産に対し、「多すぎるのでは」という疑問の声もあります。こうした意見は世界遺産の経済効果を重視する人々によく見られ、数が増えるほど価値を感じにくくなるという主張もあります。そのため登録数を抑え、既存の世界遺産から「本当に大切なもの」だけに保護の対象を絞るべきだという提案もあります。しかし、「人類共通の宝物」を謳う世界遺産の価値を、さらに厳選することは簡単ではありません。同じ遺産でも、価値の見え方は判断する側の文化や価値観、時代背景によっても変わり得るからです。

 そうした議論はさておき、制度の運用は運営費と専門人材のサポートの上に成り立っています。世界遺産委員会の運営には多額の費用が掛かり、それを負担できる国が限られるため、開催国が決まりにくいという状況もあります。また、登録審査の段階では、諮問機関であるICOMOSやIUCNが、現地調査や評価、勧告の作成を担っていますが、これらは専門家のボランティアによって支えられている側面もあります。さらに登録後も、遺産を保有する国や地域から提出される定期報告や保全状況などを専門的観点から検討し、必要に応じて調査や助言を行います

 世界遺産の数が増えるという事実は、価値の広がりを示す一方で、登録に伴う審査やモニタリング、保全計画の見直しなどの作業の増加も意味します。つまり世界遺産が増えるほど、制度としての「守り続ける力」が一層求められるのです。

新たな推薦は1カ国から1年につき1件まで

 1年に一度開催される世界遺産委員会では、新規登録の審査だけでなく、登録後の保全状況の確認や危機遺産リストに関する審議なども行われます。そうしたスケジュールの都合などもあり、新規登録の審査数には上限が設けられています。各国が提出できる推薦書は原則1年に1件までとされ、年間で審査される推薦案件の総数は、全体で最大35件に制限されています。

審査はどう進む?

【1】登録

世界遺産にふさわしいとする勧告

【2】情報照会

世界遺産としての価値は認めるが、それを証明するための追加情報を求める勧告

【3】登録延期

世界遺産としての価値は認めるが、根本的に推薦書を作り直すことを求める勧告

【4】不登録

世界遺産としての価値が認められないとする勧告

勧告には4段階がある

世界遺産の審査では、評価機関が結論を4段階で勧告し、これに基づいて世界遺産委員会で話し合いが行われます。価値が認められれば「登録」、資料不足なら「情報照会」、推薦書の作り直しが必要なら「登録延期」、価値が認められなければ「不登録」となります。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』監修:宮澤 光

【監修者紹介】
宮澤 光(みやざわ・ひかる)
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。跡見学園女子大学非常勤講師。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』
監修:宮澤 光


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