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アーチ型の橋の秘密は石の形状にある、石の断面が台形なのはなぜ?【物理の話】

Text:長澤光晴

アーチ型の橋の秘密

アーチ型の橋の秘密は石の形状にあります。よく見ると、石の断面は真四角ではなく、台形になっていることがわかります。

下図は、アーチ型の橋の中央付近を拡大したものです。

石Aは、自分の両脇の2つの石B・Cを、少し下向きの力で押して作用することができます。その結果、石Aは反作用として、石Bと石Cから少し上向きの力を受けることになります。この2つの反作用を足し合わせると、上向きにちょうど石Aに作用する重力と釣り合うだけ力が残ります。

つまり、アーチ型の橋を構成している石は、自分の両脇の石を押すことによって受ける反作用で自重を支えているのです。石同士は重力よりも大きな力で押し合うことになりますが、石は圧縮しようとする力にとても強いので、石の種類の選択を誤らなければ問題はありません。

ただし、最終的に橋の総重量を支えるのはアーチの両端の地面ですから、その部分の地盤がしっかりしていなければ、橋は崩れてしまいます。

アーチ型の橋をつくるときは、まず、アーチ上に木枠を組んで、その上に石を綺麗に並べ、そのあとで木枠を取りはずします。石の組み方が悪いと、木枠を取り除いた直後に崩れてしまいます。

アーチは時代を超えて現代でもよく使われる優れた構造です。たとえば、ダムの壁やトンネルの壁面など、圧縮する力が大きくかかるところに採用されています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。

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