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精神遅滞とも称される知的発達の障害である「知的能力障害(ID)」とはどんな病気?【臨床心理学】

Text:湯汲英史

知的機能・適応機能・発達期で診断

知的能力障害(ID)は、同年代と比較して知的発達に遅れが見られ、上手に社会的適応ができない特性です。「精神遅滞」や「知的発達症」とも表記されます。知的機能、適応機能、発達期という3つの基準を満たすと知的能力障害と診断されます。

これまで診断基準のベースとなっていたのは知的機能でした。IQ(知能指数)平均100・標準偏差15の検査において、約70以下がこの特性に該当し、約51~70が軽度、約36~50が中度、約21~35が重度、約20以下が最重度と、IQの範囲によって4つの重症度に分かれていました。

ただし、『DSM −5』による「IQのみで診断することはできない」との見解を受け、現在は知的機能に加えて「適応機能」も併せて診断されるようになりました。適応機能では、対人関係に必要な社会的スキルや生活に必要な実用的スキルの有無などが心理職によって行動観察されます。

そして、最終的に知的機能と適応機能の問題がおおむね18歳までに認められたか否かを確認する「発達期」の診断を経て、知的能力障害かどうかが決まります。厚生労働省によれば、知的能力障害の有病率は一般人口の約1%とのことです。男女比はおよそ軽度1・6:1~重度1・2:1で、やや男性に多い傾向が見られます。

知的能力障害の判定基準【眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学】

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』監修/湯汲英史

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 臨床心理学』
監修:湯汲英史

ADHDや学習障害、統合失調症やパニック障害などの言葉を耳にする機会はありますが、なんとなく心やメンタルの不調・病気と捉えてしまいがちな臨床心理学の分野。しかし紐解いていくと実はそれぞれの症状には特性や原因があり、子どもが抱えやすいのものから大人が抱えやすいものまで様々です。また、ストレスが原因で自分では気づかないうちに発症してしまうものも。本書ではそんな一見理解し難い「心の問題」の特性や症状を図解でわかりやすく解説します。最も大切なことはしっかりと特性を理解して自分と、そして他人と向き合うことです。「自分は他人がふつうにできることができない」「職場のあの人はどうも変に感じる」「子どもがじっとしていてくれない」こうした日常のもやっとした感情も、臨床心理学を知ることで理解が深まります。また、実際に現場で心の病気を抱えた人と向き合う公認心理士師の仕事についても紹介します。臨床心理学を通して「心の問題」について知ることで、自分や他人の特性がわかり、周囲と上手に付き合っていく方法を知ることができる一冊です。

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