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心臓は生まれて死ぬまで毎日10万回も心拍する⁉心臓が働き続けても疲れない理由とは?【人体の不思議】

Text:西野精治

息を吐くとき、ほんのわずかな休息をとっている!

心臓は、生まれてから死ぬまで毎日およそ10万回の拍動(心拍)を繰り返しながら、全身に血液を送り続ける働きものの臓器です。

1回の拍動で60ミリリットル、1分間に約5リットルの血液を送り出し、1日にすると牛乳ビン約4万本(7200リットル)分にもなります。

成人の安静時の心拍数は1分間、およそ60〜70回ですが、常に同じペースを保っているわけではなく、同じように見えても、厳密に計測すると、拍動の間隔は0・9〜1・1秒くらいの間で細かく変動しています。

この心拍変動を「揺らぎ」といい、息を吸うと速くなり、吐くと遅くなるという特徴があります。実は、心臓は、この息を吐いているわずかな時間に〝休息〟しているのです。そして、健康な人ほどこの〝休息時間〟が長く、「揺らぎ」が大きくなる傾向があるといわれます。

息を吸うときは心臓は肺にできるだけ多くの血液を送って酸素を取り込まなくてはなりませんが、息を吐いて酸素が少なくなったときに必要以上の血液を送り込む必要はありません。

そこで、息を吐いているときはペースを落として休み、疲労回復をするのです。このシステムはヒトに限らず、肺呼吸をするあらゆる動物にみられます。

カエルは、オタマジャクシのときはエラ呼吸ですが、脚が生えて肺呼吸をする頃になると、脳の中に揺らぎを生み出す「疑核」という部位ができて、呼吸に合わせて拍動が揺らぎ始めます。

ある意味、動物は心臓の「揺らぎ」システムを身につけたことで地上に進出できたといえるほど、0・1〜0・2秒ほどのわずかな〝休息〟は心臓にとって欠かせないものであり、心臓が死ぬまで拍動を続けることができる秘ひ訣けつでもあるのです。

出典:『図解 人体の不思議』監修/荻野剛志

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本書では、人間の“からだ”についての理解を深めるための基本的な疑問を取り扱い、図解を入れながら、わかりやすく説明しています。読めば皆様の“からだ”のことをもっと知ろうとする意欲を刺激し、さらに知識を得るための第一歩となってくれるはずです。

脳は重くてシワの数が多いほど頭がいいのか?

生物の体には不思議なポイントが沢山あります。そして特に最も神秘的なカラダの部位と言えば人間の脳です。まずは、人体の脳における不思議について解説しましょう。

動物と脳の関係を比較すると、一般に小動物ほど体重の割に脳が重く、逆に大型動物ほど軽いことがわかります。動物の脳と体重の間には、「脳の重量は体重の0.75乗に比例する」という規則性があり、これを「スケーリング」といいます。ただし、この動物界の普遍的な規則にあてはまらない動物がいます。それがヒトです。ヒトは、動物の中では例外的に大きな脳を持っているのです。

また、ヒトの場合、アインシュタインの脳が1230グラムと一般的な成人男性の脳(1350〜1500グラム)よりも小さかったことから、脳の大きさと頭のよさは関係ない、ともいわれます。しかし、カリフォルニア大学の「脳の大きさと知能指数(IQ)の関係」の研究では、わずかながら脳の大きな人ほどIQが高く、とくに「大脳皮質」の「前頭前野」と「後側頭葉」の皮質が厚い人のIQが高いという結果が発表されました。

天才は生まれつきではない、幼少期がポイント

ところが、さらに研究を進めると、皮質が厚くてもIQが高くない人がいることもわかりました。このことから「IQの高さは皮質の厚さより、脳が幼少期にどれだけ成長したかが重要」といわれてきました。この説を裏づけるように、IQが120以上の人の脳は、7〜9歳頃の幼少期にはむしろ平均よりも皮質が薄く、その後13歳まで肥大化し、厚みを増し続けていたとされ、幼少期の教育熱は高まりそうです。

しかし、一方でIQはあらゆる知能を網羅した数値ではなく、万能性がないことも把握する必要がありそうです。昔からよく「脳みそのシワが多いほど頭がいい」といわれます。しかし、脳のシワは胎児のときに大脳が形成される過程でつくられ、生まれたときにはすでにできあがっているため、成長してどんなに勉強してもシワの数は増えないそうです。

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【書誌情報】
『図解 人体の不思議』
監修:荻野剛志

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