診断名よりも特性で判断しよう
発達障害の診断基準は、『DSM』が基準になっているということは、すでにお伝えしたとおりです。現在の『DSM-5』は2013年に改訂されたもので、それ以前は『DSM -4』が診断基準として19年間使われてきました。
この改訂では、発達障害が「神経発達症群」にまとめられたほか、「小児自閉症」や「アスペルガー症候群」「小児期崩壊性障害」「特定不能の広汎性障害」などを含む「広汎性発達障害」と呼ばれていたものが、「自閉スペクトラム症(ASD)」というひとつの診断名に統合されました。アスペルガー症候群の名称は広く知られていますが、実は診断名としてはすでに存在しないのです。また、「レット症候群」は原因が染色体の異常であることがわかり、自閉スペクトラム症と関連がないために項目から除外されています。
そのほか、この改訂で「コミュニケーション症群(CD)」が神経発達症群に追加され、「注意欠陥・多動性障害」が「注意欠如・多動症(ADHD)」に変わりました。このように『DSM』の改訂に伴って、分類の移動、診断名の変化、診断名の消滅、診断基準の変化といったことが起きるわけです。その結果、「アスペルガー症候群」と診断された人が、今は「自閉スペクトラム症」と診断されます。
つまり、発達障害の人を理解するためには、診断名よりも「どんな特性があるのか?」に着目するほうがより重要だと言えるのです。
【出典】『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』
監修:湯汲英史(ゆくみえいし) 日本文芸社刊
監修者プロフィール
公認心理師・精神保健福祉士・言語聴覚士。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。現在、公益社団法人発達協会常務理事、早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園巡回指導員などを務める。 著書に『0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる』(学研プラス)、『子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ』(鈴木出版)、『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 ―話す前から一・二語文まで― 』(明石書店)など多数。
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公開日:2024.06.17