波をぶつけて波を消滅させる 巨大船の燃費を劇的に向上させる「バルバスバウ」のメカニズム【眠れなくなるほど面白い 図解 船の話】

燃費よく、速く進むための「波消し装置」がある

波の発生を抑える船首のしくみ

 船が進むと、必ず波が立ちます。これは避けられない現象ですが、船が消費するエネルギーに強く関わるため、造波抵抗をどう抑えるかは非常に重要な課題です。

 この抵抗を軽減するため、現代の大型船では船首水面下に「バルバスバウ」と呼ばれる球状の突起が設けられています。船首で生じる波を抑え、進みやすさを高めるための構造です。

 バルバスバウのしくみは、波同士を“干渉させて弱める”発想に基づいています。船首部では進行にともなって波が立ちますが、バルバスバウは別の波をつくり出します。そして両者が干渉することで、波の発生が弱まり、船全体にかかる抵抗が小さくなるのです。

 一方、船を細長い形に設計することでも造波抵抗を抑えられます。ただし、コンテナ船やタンカーのような大型船では、貨物の積みやすさや安定性を考えるとあまり細長くはできないのです。そのため、バルバスバウの恩恵はより顕著に表れ、燃料消費の削減に直結する要素になるでしょう。

 とはいえ、この船首構造が常に効果を発揮するとは限りません。想定された速力から外れたり、積み荷を降ろしたりした場合には、十分な効果が得られないことがあります。船の用途や速力、海象を見極めた設計が必要です。

バルバスバウの働き 

バルバスバウは、船首で発生する波と船体が生み出す波を干渉させ、波を抑えるしくみです。これにより造波抵抗が減り、速力と燃費が向上します。

効果を発揮できないケースもある

設計時の想定速力よりも速すぎる・遅すぎるとき

積み荷を降ろしたことで船が軽くなり、バルバスバウが水面上に出てしまったときなど

バルバスバウは特定の速力や積載状態、海象を前提に設計されています。そのため、条件が変わると効果が弱まり、むしろ逆効果になってしまうこともあるのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 船の話』監修:池田良穂

【監修者紹介】
池田良穂 (いけだ よしほ)
1950年北海道生まれ。大阪府立大学大学院工学研究科博士後期課程船舶工学専攻修了。同大学工学部船舶工学科助手、助教授を経て、同大学大学院海洋システム工学分野教授に就任。退職後、現在は大阪府立大学名誉教授、大阪公立大学客員教授。船舶工学研究活動に従事し、著作活動では船舶工学・海洋工学等に関するテーマで70冊あまり執筆。主な著書に『図解 船の科学』(講談社)、『基礎から学ぶ海運と港湾』(海文堂出版)、『船の最新知識』(SBクリエイティブ)、『船舶算法と復原性』(共著、成山堂書店)、『船のしくみ パーフェクト事典』(ナツメ社)などがある。
2023 年日本船舶海洋工学会「船舶海洋技術賞」受賞。雑誌、新聞等への寄稿も多く、日本における船舶の理解と認知度の向上に貢献したとして、2025年に国土交通大臣から「交通文化賞」を受賞。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 船の話』
監修:池田良穂


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