【コラム】W杯をボイコット。インド驚きの理由【二宮清純 スポーツの嵐】

56年メルボリン五輪4位と強豪だったインド
W杯優勝4回のドイツが、6月に開幕するサッカーW杯北中米大会をボイコット――。
衝撃的なニュースが飛び込んできたのは、1月中旬のことだ。
ドナルド・トランプ米大統領がこだわるグリーンランド領有に反発するドイツの与党の外交担当者が「(ボイコットは)トランプを正気にさせる最後の手かもしれない」と語ったことで火がついた。
しかし、フリードリヒ・メルツ首相は「エスカレーションは望んでいない」と及び腰。ドイツサッカー連盟も「現時点では検討しない」と打ち消したことで、現在は沈静化しつつある。
トランプの「無理が通れば道理が引っ込む」と言わんばかりの、ルール無視のディールには、誰もが辟易している。とはいえ、W杯のボイコットともなれば、これはあからさまなスポーツの政治利用であり、逆にドイツに批判が向く。
それに、だ。仮にW杯をボイコットしたところで、トランプが「正気」に戻ることはありえないだろう。西半球は全て自分のものだと彼は考えているのだから。
実は4年前のカタール大会でも、開幕前の一時期、ボイコット話が流れたことがある。
英紙デイリーメールが、スタジアムの建設現場で6500人以上の外国人移民労働者が命を落としたと報じたことがきっかけで、欧州を中心に「ボイコットすべき」との意見が相次いだ。
ジャンニ・インファンティーノFIFA会長は「欧州が世界に道徳的な説教をする前に、過去3000年の間に、何をしてきたか謝罪すべきだ」と反論。詭弁のように聞こえたが、それ以上ボイコットの動きは広がらなかった。
もっとも過去において、W杯を本当にボイコットしてしまった国もある。1950年ブラジル大会のインドだ。
クリケットの強国として知られるインドだが、英国の植民地だったこともあり、昔はサッカーも強かった。51年と62年には、アジア大会で金メダルを獲得している。また56年のメルボルン五輪でも4位入賞を果たしている。
そのインドは、なぜW杯をボイコットしたのか。開幕直前になってFIFAからシューズの着用を義務付けられたことが理由と見られている。
それまでインドの選手は裸足にサポーターを巻いたスタイルでプレーしていた。とてもシューズでは戦えない、とインド協会が判断したというのだから驚く。
もっとも、それだけが理由ではない。ブラジルへの高額な渡航費、W杯よりも五輪重視の協会の姿勢も背景にはあったようだ。
今現在、インドは1度もW杯出場を果たしていない。
写真=PhotoAC
初出=週刊漫画ゴラク2月28日発売号
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