1989年の悲劇が変えた!現代のタンカーが油を漏らしにくくした船のメカニズムとは?【眠れなくなるほど面白い 図解 船の話】

船は衝撃に強い構造を持っている

大事故が変えた船の標準

海を航行する船は、常に衝突や座礁といった不測の事態と隣り合わせです。特に原油タンカーでは、こうした衝撃時の油流出に備えるため「ダブルハル(二重船殻)」が標準となっています。これは船体の外板と内板を二重に設け、その間に空間を確保する構造です。外板が損傷しても内板が守る貨物区域まで被害が及びにくく、原油が海に流出するリスクを大幅に下げられます。

このダブルハルが国際的に義務化される大きなきっかけとなったのが、1989年にアラスカ沖で発生したエクソン・バルディーズ号の原油流出事故でした。シングルハルのタンカーが座礁し、船体が破損。積載していた原油が大量に海へ流出してしまい、広範囲に深刻な海洋汚染を引き起こしました。

ちなみに、外板と内板の間にできた空間は「バラストタンク」と言います。ここへ海水を出し入れすることで船の傾きや沈み込みをこまかく調整できるのです。

たとえば積み荷が少ないときは、重り代わりに海水を入れて船体を安定させ、プロペラ深度が浅くなるのを防ぎます。液体貨物の流出を防ぐ防波堤であると同時に、船の安定性を支える調整機構でもある点に、ダブルハル特有の強さがあります。

貨物と海を守るダブルハル

シングルハル

外板が壊れると、そのまま原油が外へ漏れ出す

ダブルハル

外板、内板。外板が壊れても内板が残っているため、原油が流出せずに済む

ダブルハルでは、船体の外板が損傷しても内板が残るため、原油が海へ流出するのを防ぎます。大事故を教訓に生まれた、環境を守るための船体構造です。

バラストタンクで船の姿勢を安定させる

積み荷を降ろした船

重心が上がって不安定に → バラストタンクに海水を入れると、それが重りとなって空荷でも安定する

バラストタンクは、海水を入れて船の重心を下げ、プロペラ深度を深くする装置です。積み荷が少ないときも船体を安定させ、プロペラが空中にでるのを防ぎます。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 船の話』監修:池田良穂

【監修者紹介】
池田良穂 (いけだ よしほ)
1950年北海道生まれ。大阪府立大学大学院工学研究科博士後期課程船舶工学専攻修了。同大学工学部船舶工学科助手、助教授を経て、同大学大学院海洋システム工学分野教授に就任。退職後、現在は大阪府立大学名誉教授、大阪公立大学客員教授。船舶工学研究活動に従事し、著作活動では船舶工学・海洋工学等に関するテーマで70冊あまり執筆。主な著書に『図解 船の科学』(講談社)、『基礎から学ぶ海運と港湾』(海文堂出版)、『船の最新知識』(SBクリエイティブ)、『船舶算法と復原性』(共著、成山堂書店)、『船のしくみ パーフェクト事典』(ナツメ社)などがある。
2023 年日本船舶海洋工学会「船舶海洋技術賞」受賞。雑誌、新聞等への寄稿も多く、日本における船舶の理解と認知度の向上に貢献したとして、2025年に国土交通大臣から「交通文化賞」を受賞。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 船の話』
監修:池田良穂


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