役人が来たら「家をぶっ壊す」!?世界遺産アルベロベッロの可愛い家々が生まれた背景とは【眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産】

10の基準で読み解く「一度は行きたい世界遺産」

10の登録基準に沿って代表的な世界遺産を紹介。景観だけではない、真の魅力が見えてきます。


登録基準(ⅴ)独自の伝統的集落や、人類と環境の交流を示す遺産

「アルベロベッロのトゥルッリ」とんがり屋根は生存戦略?

 イタリア南部プーリア州にあるアルベロベッロには、白い漆喰の壁と円錐形の石屋根を持つ住宅「トゥルッリ」が立ち並びます。ひとつの部屋にひとつの円錐状の屋根が付く建物「トゥルッロ」がいくつか集まって、複数形の呼び名「トゥルッリ」となります。旧市街には現在も1500軒以上のトゥルッリがあり、その多くが住居やレストラン、宿泊施設として使われ、伝統的な景色が受け継がれています。

 この地方では、先史時代から石灰岩を積み上げた建築技法が発展してきました。雨が少なく水源に乏しい上、石灰岩の大地には強い日差しが照り付けます。この地に入植した人々が、そうした過酷な環境に適応する中で生み出したのがトゥルッリです。薄く切り出した石灰岩をモルタルを使わずに積み上げ、外側を漆喰で白く塗り固めた構造です。二重に積み上げられた壁の隙間には、小石を詰めるなどして厚い壁が外気を遮り、室温を一定に保ちやすくしています。

 また、雨水は屋根を伝って地下の貯水槽に溜められ、川や池が近くにない開拓地での生活を支えました。特徴的な円錐形の屋根には、そうした開拓者たちの知恵と工夫が詰まっています。

【THINK!】独自性は環境に適応した結果、生まれる?


簡素な造りは税金逃れのため?

 この地方では当時、「家屋の数」に応じて税金が課される制度があったと伝えられています。そこで領主は、国王に納める税を減らすため、微税人が視察に来ると知ると、領民に命じて課税対象となる家を一時的に取り壊させたのだとか。家の数を減らして申告するための、強引な節税(というより脱税)策だったといわれています。

 やがて領主の支配から逃れるため、領民たちは王領地(国王の直轄地)になることを願い出たとされます。こうして領主のもとから解放されると、トゥルッリは新たに建てられなくなりました。

イラスト:どくだみ三銃士

雨を集める屋根が暮らしを支えた

 円錐形の石積み屋根は、雨を集める器のような役割を果たすのが特徴です。降った雨は屋根の勾配に沿って流れ、溝などを通って家の下に掘られた地下の貯水槽へ導かれます。こうした工夫が、川や池などが少ない厳しい土地でも生活用水を確保しやすくし、開拓地の暮らしを支えました。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』監修:宮澤 光 / イラスト:どくだみ三銃士

【監修者紹介】
宮澤 光(みやざわ・ひかる)
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。跡見学園女子大学非常勤講師。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』
監修:宮澤 光


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