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光源氏の美しさに心乱す藤壺が詠んだ歌とは!?【図解 源氏物語】

Text:高木 和子

不義の子の誕生(紅葉賀)

紅葉の美しい10月、朱雀院(すざくいん)での一院の長寿の祝宴に際し、身重の藤壺のために、桐壺帝は宮中で試薬(リハーサル)を催しました。源氏と頭中将が、唐から伝わった二人舞の青海波(せいがいは)を披露。源氏の舞の美しさが人々を感動させ、桐壺帝も涙を落とすほどでした。源氏を快く思わない弘徽殿女御は、不吉にも「こんなに美しい人は神隠しにあうのでは」などとつぶやきます。

しかし藤壺は、源氏の舞を言葉少なに称賛するのみで、「桐壺帝への畏れ多い裏切りさえなければ、この場を楽しめたのに」と思うのでした。藤壺は出産予定の12月になっても産気づかず2月中旬にようやく出産。源氏にそっくりの子どもを見て、藤壺は恐れおののきますが、桐壺帝は手放しで喜び、源氏に「本当に似ているけど、小さいうちはみんなこんな風なの」とかたるので、源氏も感動しながら罪の意識を抱きます。

藤壺に避けられた源氏は、面差しの似た紫の上に心慰められ、葵の上とはますます疎遠になります。桐壺帝は、葵の上との結婚が心に染まないのだと、源氏を不憫(ふびん)がりました。そんな折、源氏は年が57、8歳の好色の老女官、源典侍(げんのないしのすけ)に「押し開いてきませ」と催馬楽(さいばら)の一節を踏まえたセリフで露骨に迫られ、一夜をともにします。その夜更けに頭中将が源典侍を訪れ、源氏と頭中将は互いの装束を取り合って戯れます。7月、桐壺帝は藤壺を中宮(ちゅうぐう)にします。生まれた若宮を、いずれ東宮にするための配慮でした。

一院・・・桐壺帝より前の帝の一人。おそらく桐壺帝の父だろうが、不明。
2月中旬・・・桐壺帝の子としては遅いが、源氏の今年は順当な出産時期。
催馬楽・・・平安時代に流行した歌謡の一種。

光源氏の美しさに心乱す藤壺

おほけなき心のなからましかば、ましてめでたく見えまし

訳:畏れ多い心の悩みがなかったならば、いっそう素晴らしく見えたろうに

鑑賞:青海波を舞う光源氏の美しさを見た藤壺がその思いを詠んだ言葉。「畏れ多い心の悩み」は光源氏との密通、帝への裏切りを指す。

ポイント:紅葉賀(もみじのが)とは、紅葉のころに催す祝宴で、ここでは先の帝である一院(いちのいん)の長寿の祝いを指す。祝宴は一院の住む朱雀院で行われるが、桐壺帝は身重の藤壺を気遣い、行幸の前に宮中で試薬を行った。周囲が光源氏の美しさを絶賛する中、光源氏との密通に悩む藤壺は、その美しさを心から称賛することもできない。

藤壺が詠んだ歌『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子 監

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。

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