空で“上下”がわからなくなる!? 飛行機の地球儀「姿勢指示器ADI」のしくみとは【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】


飛行機の現在の「姿勢」を知る装置
姿勢を知るには姿勢指示器の「地球儀」が必要
雪山のような白一色の雪原では、ホワイトアウトと呼ばれる錯覚、つまり、どちらが天でどちらが地かわからなくなることが起きます。
両足で立っていても天地がわからなくなってしまうので、ましてや空中で、それも雲中飛行ではわかるはずがありません。そのため昔は飛行機は天気のよい時にしか飛ばなかったそうです。
それでも飛行機の姿勢を正しく知る必要はあり、そのもっとも単純な計器が、左図のような飛行機の前面に張ったロープです。この単純な計器でも地球の水平線との比較により、上昇、降下そして傾きの基本的な姿勢がわかります。
現在ではもちろんロープの計器ではなく、外をまったく見なくても姿勢がわかるようになっています。なぜならば計器の中に地球儀を入れてしまったからです。その計器はADIと呼ばれている姿勢指示器です。
指示器には水平線があり、その線より上は空を思わせる青、下は地面を思わせる茶色に着色されています。まさに地球儀が入っている計器です。そして同じく計器内にある飛行機のシンボルと地球を比較して、姿勢を知ろうというわけです。
飛行機が傾いても、機首を上げ下げしても、計器の水平線は地球の水平線と同じになるように保っています。動きとしては、飛行機のシンボルは固定されているため地球儀のほうが動きますが、計器だけ見ていると飛行機が動いているように感じます。この姿勢指示器をふくめて、方位を知る計器などはジャイロ(角度などを測る計測器)が活躍する計器ですが、どのようにジャイロを利用しているのか次回の記事で調べてみましょう。
どうやって自分の姿勢を知ることができるのか

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治
「飛行機はなぜ、どうやって空を飛べるのか」という基本から、最新の知識、身近な航空雑学まで、飛行機の魅力をたっぷり図解でわかりやすく教える一冊。
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