『伝授』第26回「去勢」や「ノド鳴り」をどう受け止めればよいのかを伝授

 今回は「去勢」と「ノド鳴り」、この2つのテーマについて、俺の考えを伝授しようと思う。

去勢した馬をどう評価するか?

 去勢すると馬体が大幅に減ってしまう馬が多い。その理由について、北海道の獣医師3人くらいに聞いてみた。すると、去勢することでホルモンバランスが崩れてしまい、それが正常な状態に戻るのに半年は必要だからだと口を揃えていた。
 だけど、その理論が獣医師のなかで当たり前の教えになっているだけで、実際のところは分からないのではないかと俺は思う。それに当てはまらない馬もいるからな。

 去勢明けの馬は体重が減っていたら割り引く。増えていたのなら、買うか買わないかは別としてプラスには捉える。
 ただ、もともと明らかに能力が足りない馬をわざわざお金をかけて去勢はしない。ある程度走るという目論見があるから、性格が良くなればと思って手術をする。毎年何頭も去勢をする馬はいるけど、その後大きく変わって活躍したというのは、個人的な記憶だとレガシーワールドとマグナーテンくらいじゃないか。ダートだとサウンドトゥルーか。
 去勢しても、うるさい馬は相変わらずうるさいし、残念ながら変わらない馬もいっぱいいるのが現実だ。

4歳夏の時点では1勝クラスだったが、去勢してから勝利を重ねチャンピオンズカップやJBCクラシックを勝ったサウンドトゥルー

香港は騙馬が当たり前な理由

 去勢といえば、香港競馬は騙馬ばかりだ。先週もクイーンエリザベス2世カップでマスカレードボールにも勝った世界賞金王の座にあるロマンチックウォリアーのような活躍馬がいるのに、どうやって種の起源を残すのかと不思議に思った。
 それで、詳しい人に聞いたら、香港の馬はオーストラリア産がほとんどで、香港に持っていく馬は最初から騙馬にするらしい。稀に去勢しないで連れてきて残しておく馬もいるらしいが、そのうち香港で去勢してしまうそうだ。
 欧米は種馬として残すことも大事な事業の一つだけど、香港の場合は「レースに出して楽しむことが競馬」という考えが根底にあるから、種馬は関係がない。

24年の安田記念も勝った香港のロマンチックウォリアーはデビュー時から去勢されていた

 それなら、種馬自体を香港に持ってきて生産すればいいのにと個人的には思うが、香港の人たちからしたら走ろうと走らなかろうと、種馬という概念がないらしい。だから最初からいらないことをしないように去勢し、筋肉を柔らかくして長く丈夫に使う。

ノド鳴りは気にする

 俺はノド鳴りをめちゃくちゃ気にする。昔からノド鳴りを気にしないという調教師がいるけど、鳴るという事象がハッキリしているのだから、影響がないとは言えない。

 セリでは、生まれてからどういう症状があったかを公表しなければならない項目があって、ノド鳴りについては必ず書かなければならないことになっている。その段階ではまだ症状としては出ていなくても、俺はそのうち必ず影響が出ると思っている。

 競走馬としてデビューしてから、今まで鳴っていなかったのが、急に鳴り出したら絶対に買わない。ダイワメジャーみたいにいつも鳴ってそれでも走っているなら、まぁそういうものだと思うけどね。 

・ノド鳴りは短距離でも、馬が苦しいと知ってしまったらダメ

 一般的に馬が呼吸を止めて全力で走れるのは、600~800mだという。それは鼻で呼吸していなくても、体で呼吸しているからだそうだ。
 ノド鳴りでも短距離だったら走れるというのは、苦しくなる前にレースが終わるから。だけど馬が短距離でも「走ると苦しいんだよな」と覚えてしまうと、レースが終わる前に競馬をやめてしまう。
 1200mを使って馬が苦しくなる前に毎回走り切ればいいけど、マイルを使って苦しいと分かると1200mになっても「走ることは苦しいものだ」という記憶が刻まれていて本気で走れなくなる馬もいる。

 22年の皐月賞を勝ったジオグリフはデビュー前からノドが鳴っていた。ダービー以降、とたんに走らなくなったのは、絶対にノド鳴りが関係あると俺は思っている。ダートを試してもダメだったように、本人の中で「走ることは苦しいこと」となってしまったら馬は走らなくなるということがよく分かる例だと思うよ。

この記事のCategory

求人情報

インフォテキストが入ります