日本地図だけじゃなかった、富士山の高さも測った伊能忠敬の驚異的な測量技術【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

「3776m」はどうやって測った? 富士山と測量技術の歴史

伊能忠敬の驚異的な測量技術

 富士山の標高が3776mというのはよく知られていますが、2024年に人工衛星を用いた測位システムによって、最新の値が3775.56mに改定されました。四捨五入すると3776mになるため、現在もこれまで通りの標高を用いるのが一般的です。

 富士山測量の歴史をさかのぼったとき、実測に基づく日本地図『大日本沿海輿地全図』を完成させた伊能忠敬に言及しないわけにはいきません。遠くからでも見える富士山を測量の目安にしていた伊能は、一方で富士山の標高を3928mと算出しています。現在の数値とは約150mの開きがありますが、時代を考えると驚異的な精度といえるでしょう。

 伊能は水平距離と仰ぎ見たときの角度から、富士山の標高を算出しました。三角関数を用いたこの方法を三角測量といいます。その後、明治時代に入ってからは軍の機関などにより、より精密な三角測量が実施されました。

 近年では、人工衛星を用いた「GNSS測量」に加え、航空機からレーザー光を照射して地表の形状を面的に把握する「LiDAR」といった技術も活用されています。こうした複数の測量手法を組み合わせることで、富士山の標高は現在の「3775.56m」にたどり着いたのです。

伊能忠敬は富士山の標高も測定した

1860年、イギリスの初代駐日公使ラザフォード・オールコックが富士山に登り、測量も行いましたが、結果は4322.6m。伊能忠敬が算出した3928mという数字は、これより40年以上前のことです。

伊能忠敬(1745〜1818年)

商人として成功したのち隠居。それから暦学・天文学を修め、約17年かけて測量のため日本中を歩きまわった。はじめての実測による日本地図として有名な「大日本沿海輿地全図(伊能図)」はその成果。

山の高さはこうして測る

水準測量

全国の国道などに、約2km間隔で測量の基準となる「水準点」が置かれています。水準測量はこの水準点と高さを知りたい場所の高低差を求める測量法ですが、富士山のような高い山の測量には不向きです。

三角測量

三角形は1辺の長さとその両端の角度がわかれば、残る2辺の長さもわかります。つまり底辺の距離を測定し、水準点から山頂の三角点(位置=緯度・経度を表す国家基準点)を仰ぎ見た角度を測ることで山の高さがわかります。

日本水準原点

標高は東京湾の平均海面を基準とした高さ。国会議事堂の側に設置されている「日本水準原点」は「0」の目盛りが標高24.39mと決められており、ここを基準として土地の高さを求める。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話』監修:富士学会

【監修者情報】
富士学会
富士山と、その関連地域を対象として、自然科学から芸術、歴史、宗教の人文科学までを広く網羅し、富士山にちなんだ教育や、噴火を想定した防災など、総合的な領域の研究を進めている。富士山の本質と全体像の探求、関連地域の環境保全、防災、活性化などを目的として、学術大会・討論会・講習会などの開催、会誌・図書などの出版、関連教育・文化活動への協力と支援などをおこなっている。事務局は東京の日本大学文理学部地理学教室に置かれている。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話』
監修:富士学会


【Amazonで購入する】

★累計400万部!
大人気『眠れなくなるほど面白い図解シリーズ』地域探求ジャンルに、世界文化遺産「富士山」が登場。

★「美しい」「かっこいい」「癒される」だけじゃない!
地球科学、歴史、芸術、信仰、伝説、地域などの切り口からガイド本では教えてくれない【富士山】の魅力を徹底解説。

・年齢は1万歳!(山としては若手) ビルなら899階建て! 体積は琵琶湖50杯分! 数字で見る富士山
・富士山はかつてツインピークスだった! 山体崩壊の歴史
・「富士山の頂上」はじつは8つもある(八神峰)
・「3776m」はどうやって測った? 富士山と測量技術の歴史
・富士山が見える一番遠い場所 西は和歌山県、東は福島県
・「富士五湖」のほかに、現れては消える「幻の湖」がある(ほぼ7年に1度現れる「赤池」)
・かぐや姫は富士山に帰った?『竹取物語』と不死の山
・琵琶湖は大巨人が富士山がつくるために掘った跡!?
・富士山周辺のソウルフードはなぜ麺類ばかりなのか?(うどん、ほうとう、やきそば)
・山小屋バイト、富士山頂郵便局、神社、診療所……富士山ではたらく人たち
・山頂の神秘を味わいつくす「お鉢めぐり」
・地球温暖化で富士山の姿が変わる?

監修/富士学会
富士山と、その関連地域を対象として、自然科学から芸術、歴史、宗教の人文科学までを広く網羅し、富士山にちなんだ教育や、噴火を想定した防災など、総合的な領域の研究を進めている。富士山の本質と全体像の探求、関連地域の環境保全、防災、活性化などを目的として、学術大会・討論会・講習会などの開催、会誌・図書などの出版、関連教育・文化活動への協力と支援などをおこなっている。事務局は東京の日本大学文理学部地理学教室に置かれている。

この記事のCategory

オススメ記事

「富士五湖」には「6つ目の湖」がある!? 条件が揃うと現れる幻の湖のナゾ【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

富士山は「1万歳のピチピチ新人」!?火山の世界ではまだまだ若手という驚きの事実【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

エベレスト級のスケールが日本に?駿河湾の底から見上げる「隠れた富士山」の圧倒的迫力【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

実は『竹取物語』も評価対象? 世界遺産となった富士山が評価された「本当の理由」とは【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

古地図にも載っていない「消えた東の峰」! 富士山がきれいなフォルムになった大崩壊の歴史【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

【罹災遺跡】日常が「その瞬間」に封じ込められた!富士山三大噴火の爪痕【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

名だたる武将たちも信仰した富士山。信長・家康も愛した「日本一の山」の逸話【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

夏目漱石は冷めていた?「富士山万歳!」と浮かれる世間に放った、文豪らしい視線とは【眠れなくなるほど面白い 図解 富士山の話】

求人情報

インフォテキストが入ります